――蜂須賀敬明さんは、いま三十歳。若きストーリーテラーとして、最も注目される存在だ。2016年に『待ってよ』で松本清張賞を受賞。2017年に刊行された『横浜大戦争』は空前絶後のエンタテイメント小説として、横浜を中心に大きな反響を得た。4月25日発売の『バビロンの階段』は、蜂須賀さんの等身大に近い主人公が、親友の死の謎を追いかけるという青春小説。超弩級の書き下ろしを完成させた小説家が、若い世代の読者にむけて、「わくわくした」という執筆の心境を綴る。
この作品は、僕が最も学校に行きたくなかった高一の頃に、こんな物語があれば自由な気持ちになれたかもしれない、と思えるものにしたくて執筆を始めました。デビュー作の『待ってよ』は、時が逆行する街に迷い込んだマジシャンの物語。二作目の『横浜大戦争』は横浜の中心を決めるべく、十八の神々がハチャメチャ騒ぎを巻き起こすコメディ。毛色のまるで異なる二作に様々な反響を頂き、しめしめと思いつつ、さて三作目をどうするかとなり、ついにずっとやりたかった青春ものに手を出してみるか、という運びになりました。
かつて自分に年齢の近い主人公の物語に着手したこともあったのですが、その時は書きたい気持ちが先行しすぎて形にならず、苦戦を強いられました。今回、ようやく一つの作品として発表することができたのは、プロとしての技術が向上したこともあるのでしょうが、それ以上に僕が青春を振り返れる年齢になったことの方が大きいのでしょう。僕も三十歳になり、僕らを取り巻く環境も、驚くほど変わりました。
僕が十代の頃は、今のようにラインやツイッターといったSNSがあったわけではないので、メールのやり取りはあくまで連絡手段であって、自分固有の領域と呼べるほど重きがあるわけではありませんでした。今やラインのグループは実社会以上に自分の存在意義につながるコミュニティへと変容し、ツイッターで恋に発展することもあれば、死に直結するような事件も起こり、もはやネットの世界が向こう側とは呼べない、現実と仮想空間が二重螺旋のように混在する、複雑な世の中になってきました。
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ネットの洪水から離れてみよう
2019.12.04インタビュー・対談
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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