書評

こんなカッコいい男はいない!――逆境に負けないために読むべき本(あとがき)

文: 高杉 良

『懲戒解雇』(高杉 良 著)

『懲戒解雇』(高杉 良 著)

 そして、彼に負けず劣らずの好漢が、人事課長の仁科こと清水喬夫(たかお)さんだ。ふたりの友情は、傍で見ていても本当に麗しかった。ただ仲が良いというだけではない。互いを辛辣に批判することだってある。当初、訴訟に踏み切るか逡巡していた所沢さんを、思いとどまるよう必死で説得したのは清水さんだった。そんなことしたら、お前、終わりだぞ、と。しかし所沢さんの決意が固いと観念するや、惜しみなく協力をした。反乱分子の肩を持っても一分の得にもならないにもかかわらず、だ。

思うに、中間管理職を前後に、友達のあり方は変わる。それ以上出世すればするほど、ヒエラルキーは狭まり、時には敵対せねばならないこともある。そうした競争原理が働いて、人も組織も磨かれていくのだが、そこで重要になるのは、人事権者の公平な評価や適材適所の人員配置なのではなかろうか。

 「杉さん、反対派の意見も聞いた方がいいですよ」──。当時勤めていた石油化学新聞社の後輩音無保君の助言に従って、森を不当に貶め追放しようとする川井常務のモデルの人物には、何度も会った。確か、海軍兵学校を首席卒業、恩賜の軍刀を拝領したという秀才。次か、次の次には自分が社長だと自信満々だった。有能であることに異論はないが、目的のために手段を選ばない野心が、否が応でも感じられた。結果として、公平性を欠き、人事を壟断することに疑問を呈することで、彼がリーダーとなる芽を摘んだことは、所沢さんの功績である。

懲戒解雇高杉 良

定価:本体800円+税発売日:2018年06月08日


 こちらもおすすめ
書評なぜ辞令はかくも不条理なのか――「組織と人間」を見つめる人事小説の傑作(2017.11.30)
書評虚実超えたリアリティー 経済小説の地平拓く(2017.03.10)