書評

(文庫版あとがき:)習近平は「中興の祖」となるか、それとも悲惨な末路を辿るのか

文: 峯村健司

『宿命 習近平闘争秘史』(峯村健司 著)

『宿命 習近平闘争秘史』(峯村健司 著)

 という意外な答えが返ってきた。共産党高官の不祥事や、彼らが最も忌み嫌う権力闘争について書いているので、中国大陸で出版されないことは始めからわかっていた。台湾版の帯には「中央宣伝部 出版禁止」と目立つように記されている。そんな「発禁本」を政府がまとめ買いしていたとは。

「一番読みたがっているのが中国の官僚や軍人たち。自分たちの組織やトップについての正確な情報に飢えていますから」

 と社長は自信たっぷりに語った。それはちょうど、前例のないスピードと規模の「反腐敗キャンペーン」を推し進めて順調に権力基盤を固めた習近平国家主席が、安定した党運営をしていくと思われた矢先、国内外で問題が一気に噴出した時期と重なる。自国の現状と将来にそこはかとない不安にかられた中国の当局者が、同書を手に取ったのだろう。予期したわけではないが、中国政府当局者を含めた幅広い方々に日本人の中国分析を知っていただき、政策決定に何らかの影響を与えたとすれば、記者冥利に尽きる。

 本書では、単行本を出版した2015年3月以降の約3年間にわたる共産党および習近平国家主席の動向について大幅に書き加えた。加筆部分でも、習氏は引き続き権力闘争に明け暮れていたことがわかる。空前絶後の反腐敗キャンペーンを通じて、並み居る政敵をほぼ打ち負かして、「一強」になったにもかかわらず。

 いったい習氏は誰と闘っているのか――。15年夏に朝日新聞アメリカ総局員として赴任したワシントンで、中国専門家の当局者や中国系米国人らと会うたびに尋ねてきた。明確な答えを示す人にはまだ会っていない。そんな中、ある中国政府当局者が語った分析が印象に残っている。

宿命 習近平闘争秘史峯村健司

定価:本体940円+税発売日:2018年06月08日