2018.08.25 書評

追悼・竹本住大夫師匠。“文楽の鬼”の最期の言葉は優しかった

文: 樋渡優子

『人間、やっぱり情でんなぁ』(竹本住大夫 著)

『人間、やっぱり情でんなぁ』(竹本住大夫 著)

 平成三十年四月二十八日、七世竹本住大夫師匠は永眠されました。五月、お悔やみのためにお宅にお伺いして、師匠が面会やお稽古に使っておられた和室に足を踏み入れたとき、「この部屋はこんなに広かったのか……」と驚きました。 

 和机をはさんで、向こう側にお仏壇を背にして師匠が座り、こちら側の壁には、師匠のご実父ゆかりのお三味線が立て掛けてある。その間に腰を下ろすと、もう“部屋がいっぱい”という心地になったものでしたが、それは師匠が放つ生命力と存在感が、部屋に満ち満ちていたせいだったと気付かされました。

 光子奥様とお嬢さんの治子さんによれば、師匠は最後まで、お弟子さんを気遣われていたとのこと(お弟子さんの文字久さんは、お見舞いの帰りに自転車で転倒して、膝を怪我されていました)。「おい、見舞いに行ったりぃや……」と言われたのが、治子さんとの最後の会話になったそうです。病室を訪ねた若い三味線弾きさんには、「四月(大阪公演)はどの場に出させて貰【もろ】てる?」と尋ね、「君のとこの師匠は人柄がええから、師匠にしっかり稽古を付けて貰い」と励まされた。



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定価:本体1,700円+税発売日:2014年10月14日