- 2018.08.19
- インタビュー・対談
従業員は奴隷ではない──同世代の課題として、書かずにいられなかったテーマ
著者インタビュー 新庄耕『カトク 過重労働撲滅特別対策班』
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
高度プロフェッショナル制度導入で過労死は増えるだろう
━━この間の国会で目玉政策とされた「働き方改革」法案の一連の議論には、新庄さんはどんな感想を持っていますか?
新庄 時間外労働の上限規制や、同一労働同一賃金の推進など、長期的な効果を期待できるものもありますが、高度プロフェッショナル制度には、少なからず危惧を覚えます。
高プロは、年収1075万円以上、本人の同意、年104日以上かつ4週で4回以上の休日取得などを企業に義務付けてはいますが、少なくとも短期的には、この制度で死ぬ人は増えることはあれど、減ることはないと思いますよ。理論上、24時間労働で5日連勤という運用が可能ですが、日本の企業の中には、封建的な無言の同調圧力がまだまだ根強く、そうした殺人的な運用がなされないとは言い切れない。さらに、将来的に1075万円の年収ラインが、500万円、400万円……と下がる可能性も否定できません。その端緒となった気がします。
ただ法的拘束力はありませんが、高プロを導入したすべての職場に、労基署による立ち入り調査と監督の徹底が必要な旨の付帯決議はされましたから、城木が活躍する場面も増えるかもしれません。
━━現場の人手不足や苛酷な労働環境は、すぐにはなくならないでしょう。作家として今後にどんな予感を持っていますか?
新庄 大企業ではこの10年でコンプライアンス意識がかなり高まっていて、職場環境に気を遣っているところは増えていると思います、いっぽう医師や介護従事者の不足、ITの下請け、教師の残業、過剰品質が常態化したサービス業……と現場が疲弊してる職場は枚挙にいとまがなく、特に介護は大変と聞きます。
少子高齢化の趨勢が変らない以上、人手不足を解消するべく、今後は本格的な移民受け入れの検討も必要となるでしょう。ところが介護職ではせっかく日本に来ても、すぐ帰ってしまう外国人労働者の人が多い。日本人の求めるサービスの質が、外国人にとっては細かすぎて、耐えられないというんですね。人手不足の解消を外国人に託すのだったら、我々にも彼らを理解することが求められるわけで、サービス提供者側だけでなく、受益者側も認識をあらためる時機に来ているのかもしれません。日本の若者を使いつぶした後に、外国人を使いつぶすようなことがあってはならないですから。
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