高校生の、悩みと葛藤しながらも今を精一杯生きようとする姿が眩しかった。数年前まで私も高校生だったのに、こうも眩しく感じさせられるなんて、いい意味でやられた。
全て読み終えた後、もう一度序章手前にある「指揮棒が振り下ろされ、奏者が一斉に息を吸う。ホールを鋭い風が吹き抜ける。全身で、音楽の神様から吹く風を受けている」という文章を読んで、ようやく『風に恋う』の意味がわかった気がした。青春が心地よかった。
これから、基たちはどんな成長を遂げていくのだろう。物語には描かれていないけれど、きっと真っ直ぐでカッコいい大人になるんだろうな、と輝かしい未来が見える気がした。読後、感無量は必然だった。
青春を感じられる物語を届けてくださり、ありがとうございました。(ペンネーム:さくらさん)
「先生、僕達が全日本で金賞を取ったら、千学で先生になってください」「僕と、音楽をやってください」(p.218)
私は将来先生になりたいと考えている。瑛太郎のように、部活動の指導がしたい、などの明確な理由があるわけではない。確かに、私も高校生のときは部活動をしていたため、それに先生としてかかわることができたら楽しいだろうな、と漠然と考えていた。しかし、基のこのセリフを読んで、ハッとさせられた。これほど生徒から必要とされるような先生はなかなか居ないのではないか。生徒の全力に、こちらも全力で応えられる、そんな瑛太郎のような先生に、果たして自分はなることができるのか。そのようなことを問いかけてくる小説だった。漠然さが、少し明確さに変わった気がした。
この小説は青春小説ではあるが、ただ高校生の主人公が部活動に打ち込む姿を描くだけの小説ではない。部活動に打ち込みたいけど、勉強もしなければならないという、やりたいことをやり通す難しさが描かれている。周りの状況がそれを許さないのか、自分がやり切る力を持っていないのか、自分自身が葛藤を経験したからこそ(そして、それは誰もが経験することではないだろうか)、そんな主人公の悩みが手に取るようにわかる。ブラック部活が問題となっている今だからこそ、読むべき小説だと思う。また、本文の随所に、筆者の、この問題に対するメッセージが込められているように感じた。
作者の前著(しかも別の出版社)に一章丸々掲載と、発売前からかなり話題になっており、ずっと読みたいと思っていた本書。表紙もとても爽やかで可愛らしく、小説の内容と合わせて、今の季節にピッタリである。今部活動に打ち込む高校生にも読んでほしいが、それ以上に、大学生や大人が、今の自分の姿を見つめなおすきっかけとして読んでほしいと感じる一冊だった。(今坂朋彦さん)
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