- 2018.10.24
- 書評
2018年のトレンドはねこ娘に決定!? 生誕50周年を迎えたアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が映す、現代の闇とは?
文:岩佐 陽一 (ライター)
『ねこ娘大全』(水木プロ・東映アニメーション・岩佐陽一 監修)
出典 : #文春文庫
そして昭和46('71)年に放送された第2作にして初のカラーアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』で猫娘はレギュラーキャラに昇格。“初のカラー”というのも時代だ。以後、決して狙ったわけでもなんでもなく『鬼太郎』は'85年、'96年、2007年と計ったかのように10年置きにリメイク新作が放送されていく。その都度、ねこ娘も時代に合わせて変化し、'07年の第5期で劇的な変化を遂げる。ミニスカのキャンギャル衣裳、キュートな水着姿、果てはゲームキャラのコス等々を披露して、10年前のワードで言うみんなが“萌え”た。そして今6期のモデル体型。菜々緒や小松菜奈らモデル出身の女優が活躍し、モデルがグラドルも兼ねる“モグラ女子”という造語まで生まれた昨今、それも“時代”だろう。時代と添い寝しながらその本質を決して変えることのない稀有な作品、それが東映アニメ製作の『ゲゲゲの鬼太郎』だ。そのアニメ『鬼太郎』が今年で生誕50周年を迎えた。今期はその記念もあっての放送だが、ねこ娘の変化にこの50年の日本の社会風俗の変化がそのまま刻まれている。そういう意味では「ねこ娘」大全であることも頷けよう。犬山まなという人間の美少女との関係性も含めて、ねこ娘が今 = 2018年という時代の象徴だからだ。“鬼太郎の今”こそがねこ娘なのだ。
ねこ娘を見れば“今”が解るように『ゲゲゲの鬼太郎』には原作・アニメともに常に“時代”が反映されている。今期では、第9話のブラック企業、第22話の“テレビ番組クルー(マスメディア)の横暴”、第26話の“毒親”といった具合。極めつけは第25話で、“人を呪わば穴二つ”という諺由来の教訓を、“スマホ中毒”という現代病に絡めて巧みに描いていた。これは、『超時空要塞マクロス』シリーズなどで手腕を見せた名匠・大野木寛一流の脚本による。第15話「ずんべら霊形手術」はそもそもの原作が『鬼太郎』ではなく水木先生の短編読切だったこともあり第2期以来じつに46年ぶり(!)のアニメ化となったが、“整形”に対する捉え方の違いに時代の差を感じる。第2期ではいささか否定的だったそれが今期では、その方法論はともかくとして整形自体は肯定的に描かれている。もっとも第2期では視点が、整形以上に“人間のあくなき欲望”にあり、その“欲望”こそが“妖怪以上に恐ろしいモノ”として訴えられていて、同じ原作を扱いながらテーマの帰結が異なっている点も興味深い。第20話の「妖花の記憶」は第2期をのぞく全期にわたってアニメ化されてきたが、どれも“反戦”……というよりは水木先生自身の原体験に基づく「こんなことはもうたくさんだ!」というもっと切実な想いを汲み取ることのできる名作。今期では“戦争の風化”がクローズUPされている点に留意したいところ。
結論。『ゲゲゲの鬼太郎』を観れば時代そのものが見えるし、日本の戦後の歴史が解る。と、10年前にも書いた記憶があるので、そこは不変だろう。もしくはそれだけ筆者が成長していない、ということにもなろうが……。どこからか、私のようないつまで経っても成長しない人間に失望した鬼太郎と目玉おやじ殿のため息が聞こえてきそうだ。
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