組織の頂点に立てば、大きな力が手に入る。力とは「動員できる資源の大きさ」である。自分が一声かければ1000人が動く。ひとつの判断で100億円が動く。より大きな資源動員力を求めるのは人間という動物に埋め込まれた基礎的本能の一つだ。
社長のポジションは一つしかない。必然的に厳しい競争を勝ち抜かなければならない。組織のヒエラルキーを一つ一つ昇っていくのには多大なエネルギーを要する。経営者の位置エネルギーは、そのポジションに到達するまでにその人が費やしたありとあらゆる運動エネルギーが転化したものなのかもしれない。
さて、ここからが問題である。三角形の経営者はエネルギー保存の法則の産物である。彼らも若い頃は運動エネルギーに溢れていたのかもしれない。しかし、それが次第に位置エネルギーに転化する。位置エネルギーが増えるほど、運動エネルギーは低下する。役員、社長に昇り詰め、位置エネルギー満載となったときには、「こういう商売をしたい!」「これで稼いでいくぞ!」という運動エネルギーがすっからかんになっている。
考えてみれば、経営者にとって位置エネルギーはあくまでも手段にすぎない。大きな位置エネルギーを再び矢印の運動エネルギーに転化できてこその経営者である。ところが、三角形の経営者にとっては、社長のポジションにあるという状態それ自体が一義的な目的になってしまう。手段の目的化だ。
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