高度成長期の日本、すべてを会社に捧げて仕事に明け暮れたモーレツ社員。出世への道を昇りつめたところに待ち受けている空疎な暗闇。このコントラストが登場人物の悲哀をいっそう色濃くしている。
裏を返せば、昭和日本の高度成長こそが三角形の経営者を量産する土壌だったともいえる。企業経営に追い風が吹きまくっていた中で、企業の進むべき方向は決まっていた。自らの「矢印」がない三角形の経営者が本能の赴くままに組織の中の権力闘争に明け暮れていても、会社はなんとか回り、それなりに成長して行く時代だったのである。
成熟期に入って久しい今日の日本では、企業経営を取り巻く環境や経営者に求められる資質は当時とは大きく異なる。逆風の中、三角形の経営者ではどうにもならない。いよいよ本来の矢印の経営者がリーダーとして求められている。
いまの時代を生きる読者にとって、三角形の経営者の苦渋に満ちた貎を描く本書は格好の反面教師を提供している。
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