インタビューほか

座談会「小沢昭一さんの正体」#1

加藤 武(俳優),矢野誠一(劇評家),三田 完

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

 矢野 ちょうど僕が麻布に入ったときは、六・三・三制の戦後の教育改革の第一期で、加藤さんたちの学年は卒業されていたんですが、すぐに大学に行かなかったグループが三階の開放されていた物理教室に、必要もないのに来ていて。担任の先生から最初に言われたのは、あの近くにあんまり近寄るな、って(笑)。治外法権のようになっていました。

 加藤 階段教室ね。僕は四年修了で早稲田高等学院に入っていたんだが、里が恋しくて卒業後も入り浸っていました。

 矢野 いまでも覚えているのが、入学してすぐの五月にあった文化祭をなぜかその卒業生グループが仕切っていたこと(笑)。イガグリ頭の小沢さんが、部活ごとに趣向を変えて模擬店を出しましょう、だけど、焼き芋屋、あれだけはやめましょうね、野暮ですから、と言ったらもうドッとウケたのをよく覚えています。他にも、芸達者な人が大勢いて、ラジオ番組のパロディなんかをやって、もう抱腹絶倒でしたね。

 加藤 その文化祭では、小沢とフランキーが復員漫才というのをやっていた。街は復員兵だらけだったんで、フラさんが陸軍、小沢が海軍帰りとなりました。フランキーが復員して、食っていけないから芸能学校を始める。生徒を募集すると応募生が芸を演じる趣向でした。

 矢野 小沢さんは落語の『新聞記事』をやっていました。『阿弥陀池』の改作ですね。

 加藤 菊池寛の『屋上の狂人』の芝居にも出たし、落語もうまかった。小沢は舞台に立つと変化球を投げて来る。油断がならない。ハモニカを吹く段取りの対談をしていても、ハモニカを忘れたなんて言い出して肩すかしを喰わすんです。

 三田 加藤さんは、小沢さんと芸能座でお芝居も一緒にやってらっしゃいましたが、そのときはどんな感じだったのでしょうか。

あしたのこころだ三田 完

定価:本体700円+税発売日:2018年12月04日


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