神について饒舌に語り、旺盛な執筆活動を続けたトマス・アクィナスは、五十歳の節目を迎える直前に、「私が見、私に示されたことに比べると、私が書いたすべてのことは藁屑のように見えるのだ」という謎めいた言葉を残して著述活動を中断し、そのままこの世を去りました。
トマスが「沈黙」に陥った年齢に自分が近づくにつれ、私もまた、言葉を語ることの限界について思いを馳せる機会が多くなってきました。
そうしたなかで、若松英輔さんとの対談を繰り返しながらあらためて痛感したのは、言葉を語ることの豊かな可能性と喜びでした。
今回の対談で私が最も多く語ったのは、自分が専門とする西洋中世の哲学・神学についてでした。自分が既に熟知していると思っていたことがらも、若松さんから返される言葉の光に照らし出されることによって、新たな意味を帯びて立ち現れてくることがしばしばありました。そうした光に導かれながら、言葉がよどみなく自分の中から出てくることに自分でも驚きながら続けた対談の成果が本書です。
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