- 2019.08.27
- 書評
すべては40年前のアメリカ留学から始まった。総理と夫人と、学園経営者の奇妙な関係。
文:石井妙子 (ノンフィクション作家)
『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』(森功 著)
幾重にも絡まる蔦のような人間関係、それを著者は過去にさかのぼり丹念に調べ、すべての基にある安倍首相と加計孝太郎加計学園理事長の、義兄弟のような結びつきを詳らかにしている。
ふたりが知り合ったのは四十年以上も前のアメリカ。南カリフォルニア大学での留学生仲間だった。やがて、それぞれ父親から地位と財産を受け継いだふたりは、互いに便宜を図り合う仲となる。周囲を巻き込み、「公」を蝕(むしば)むほどに。
彼らの関係性が大きく変わるのは、小泉政権下で進められた規制緩和、「教育の自由化」以降だと本書から知った。それまでの規制が取り払われ、教育事業も新規参入のできるビジネスへと変貌していく。加計理事長はこの機運を捉えて、安倍を後ろ盾とし、事業の拡大を図っていくのである。
少子化が進む日本で二〇〇〇年以降、私立大学が次々と新設されていったのも、こうした事情による。一九九五年時点で五六五校だった大学は二〇一九年現在、七八〇校。これだけ増えれば一方で、倒産する大学が続出してもよさそうなものだが、そうした話はあまり聞かれない。助成金という名の税金が投入されているからだろう。もちろん、学生の定員割れが続けば経営は苦しくなるし、私学助成金も減額される。そこで日本人学生だけでは定員を満たしきれない新設大学は、留学生をかき集めるのである。
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