インタビューほか

女探偵が歩く街

若竹 七海

『不穏な眠り』

女探偵が歩く街

『不穏な眠り』(若竹七海 著)

 P・D・ジェイムズが長篇『女には向かない職業』で女性私立探偵コーデリア・グレイを世に送り出したのは一九七二年のこと。以来、マーシャ・マラーが描くシャロン・マコーン、リザ・コディのアンナ・リー、サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキー、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンといった女性私立探偵がミステリ界に陸続と登場。精神的にも経済的にも自立し、確固たる意志を持ち、プロとして調査を続ける彼女たちに私はすっかり魅了された。コーデリアやアンナはロンドン、V・Iはシカゴ、シャロンやキンジーはカリフォルニアに活躍する。いつか私も大きな街を舞台に、クールでカッコイイ女性私立探偵を描きたい!

 そうして生まれたのが葉村晶だ。諸先輩方の「薫陶」を受けて自立し、私の調査に手加減はないと嘯きながら真実をあぶり出す、クールでカッコイイ女探偵。というか、そうなるはずだった。

 ところが今や、晶は「仕事はできるが不運すぎる女探偵」である。本人のせいではない。探偵たるもの、刺されたり殴られたり依頼人に死なれたりしなくっちゃ、と作者が考えたせいだ。正統派の私立探偵は皆さんそういう目にあっている。末席を汚す以上、危険は避けて通れまい。

 だが優秀な調査員らしく、めだたない晶は四十代後半のフツーの日本人女性だ。ハードな暴力に晒されたらコロッといきかねない。そこで、もうちょっと適度なひどい目にしておこう、と作者は考えた。家の前に生ゴミを置かれるとかケータイを水没させるとか、大量のゴキブリに取り囲まれ店長にこき使われ風邪を引き込むといった、死なない程度のひどい目に。

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不穏な眠り若竹七海

定価:本体650円+税発売日:2019年12月05日


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