2018.08.21 インタビューほか

強運の女探偵──女探偵・葉村晶シリーズ

若竹 七海

『錆びた滑車 』(若竹七海・著)

『錆びた滑車 』(若竹七海・著)

 ロングセラーとは、「何代にもわたって読み継がれる名作」か「次々と新作が上梓される息の長いシリーズ」のどちらかだろう。

 拙著「女探偵・葉村晶シリーズ」はどちらでもない。前者でないことは言うに及ばず、「次々と新作が上梓され」ていない。なにせ第一長編『悪いうさぎ』から、第二長編『さよならの手口』が出るまでに、十三年もの歳月を要したのだ。

 しかし、二〇一四年になんとか復活すると、あっ、こんなシリーズあったね、と間が空いたぶん新鮮に受け止めてもらえたうえ、時間経過を考えれば長生きだ、ということで、ロングセラーにもなってしまった。担当編集者の花田朋子さんがつけた、葉村晶のキャッチフレーズは「仕事はできるが不運すぎる女探偵」だが、こういう顛末を含め、葉村晶はそれほど不運ではないのかもしれない。

 思い起こせば、葉村晶が登場した一九九四年は、サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキー、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンをはじめとする女性私立探偵物が続々と日本に上陸、3Fとも4Fとも言われるブームを巻き起こしていた。私はこのブームにまんまとハマり、自分でも書いてみたいと願っていた。

 とはいえ当時の日本社会では、男の私立探偵すらリアリティに欠ける。そこで短編の依頼をいただいたのを機に、ヒロインの職業はフリーターにとどめ、文体はハードボイルド風のクールなものをめざして書いたのが、葉村晶の初登場作「海の底」だ。



こちらもおすすめ
特集ミステリ古書店のバイト店員にしてクールでタフな女探偵──葉村晶のこれまで(2018.08.21)
書評僕とミステリ書店〈TRICK+TRAP〉と女探偵・葉村晶の不思議な関係(2018.08.20)
書評四十肩すら魅力的な女探偵。葉村晶は唯一無二、圧倒的なヒロインなのである。(2016.08.24)
書評長いお別れのあとに(2014.12.01)
インタビューほか最高にタフな女探偵・葉村晶がパワーアップして還ってきた!(2014.11.10)
錆びた滑車若竹七海

定価:本体800円+税発売日:2018年08月03日

静かな炎天若竹七海

定価:本体690円+税発売日:2016年08月04日

さよならの手口若竹七海

定価:本体850円+税発売日:2014年11月07日

悪いうさぎ若竹七海

定価:本体730円+税発売日:2004年07月09日

依頼人は死んだ若竹七海

定価:本体620円+税発売日:2003年06月10日