- 2021.07.07
- インタビュー・対談
【文庫化されました】大崎梢インタビュー 新米編集者、スポーツ雑誌に挑む!
「オール讀物」編集部
『彼方のゴールド』(大崎 梢)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
※単行本発売時、オール讀物に掲載されたインタビューです(2020.01.13掲載)
夢を掴んだ人を認められるか?
東京オリンピックを間近に控え、日に日に熱気を増すスポーツ界。そんな忙しない現場に“スポーツ門外漢”が突然放り込まれたら……?
『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『スクープのたまご』で、出版社を舞台に、臨場感あふれるお仕事小説を書いてきた大崎梢さん。シリーズ第四弾の舞台は“スポーツ総合雑誌”だ。
出版社〈千石社〉で働く入社三年目の目黒明日香は、営業部からスポーツ総合雑誌『Gold』編集部への異動を命ぜられる。思わず拒否権を行使したくなるほどスポーツに疎い明日香であったが、現場に通いつめ、選手たちと真摯に向き合い続けるうちに、スポーツの奥深さを体感していく。
「私はスポーツをやっていたわけでもなく、どこかのチームや選手の熱心なファンだったこともありません。ですが、スポーツファンのほとんどが知っている、憧れの雑誌『Number』には、スポーツに詳しくない人も配属されることがあると聞いて。そういう人の目線から、雑誌の舞台裏を描いたら面白くなると思いました。スポーツそのものを題材とした小説はたくさんありますが、“伝える”側の物語はあまり聞いたことがなかったので、これは挑戦してみよう! とワクワクしてきたんです」
執筆にあたっては試合の取材だけでなく、『Number』編集部をはじめとするスポーツ関係者への取材を重ねた。
「『Number』のプラン会議も見学しました。特集内容は決まっていても、試合結果は終わってみないと誰にも分からない。様々な状況をシミュレーションしながら議論を交わし誌面を考える過程は、筋書きのないドラマのようで、とても新鮮でした。カメラマンにもお話を伺い、そのエピソードは小説に色濃く反映されています」
明日香の成長と並行して描かれるのが、かつて競泳選手を目指していた幼馴染たちの姿だ。途中で夢を諦めた者、まだ追い続けている者。ライバルとして切磋琢磨してきた彼らの物語には、ある普遍的な教訓が含まれている。
「夢を諦めることが悪いことだとは思いません。しかし、納得いくまで努力を続けていれば、たとえ自分は夢が叶わなかったとしても、夢を掴んだ人のことを認めることができるのではないか。『私も頑張ったけれど、あの人はもっと頑張ったんだ』と思えた時、自分自身も成長できるのではないか。これは私が小説家を目指していたときに思っていたことでもあり、スポーツの世界にも通じることではないでしょうか」
スポーツのリアルが詰まった爽快なエンタメ小説。読後はスポーツ観戦がより一層楽しくなることだろう。
おおさきこずえ 東京都生まれ。二〇〇六年、『配達あかずきん』でデビュー。『本バスめぐりん。』『横濱エトランゼ』ほか著作多数。一七年よりミステリーズ!新人賞選考委員を務める。
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