書評

週刊誌は好きになれない人こそ、この小説を読んでほしい

文: 大矢博子 (書評家)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

『スクープのたまご』(大崎 梢 著)

 二〇〇六年に書店員を主人公にしたミステリ『配達あかずきん』(創元推理文庫)でデビューした大崎梢は、その後も出版社や移動図書館など〈本の周辺〉を舞台にした作品を多く発表、読書好きの熱い支持を得ている。

 その中でも注目されているのが、老舗出版社・千石社を舞台にしたシリーズだ。女子中学生向けファッション誌編集部に異動した男性社員の奮闘を描く『プリティが多すぎる』(文春文庫)、惚れ込んだ小説をなんとか出版したいと奔走する文芸編集者が主人公の『クローバー・レイン』(ポプラ文庫)。それぞれ独立した作品ではあるが、続けて読むと「出版社」という大きな組織を構成する顔のひとつひとつが見えてくる。

 その千石社シリーズ三作目が、本書『スクープのたまご』だ。

 だが少々毛色が違う。他の作品は、その仕事に励む主人公を読者は無条件に応援してきた。ファッション誌の意外な裏側に驚き、文芸単行本のシビアな現実に慄きながら、彼らが〈いい仕事〉をして、立派な編集者になる過程を見守ったものだ。



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スクープのたまご大崎 梢

定価:本体680円+税発売日:2018年09月04日