- 2019.12.19
- 書評
「コミュ障」投資家・村上世彰が、本当に伝えたかったこと
文:池上 彰 (ジャーナリスト)
『生涯投資家』(村上世彰 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
そこに堀江貴文氏率いるライブドアが参戦したことで、世間は大騒ぎすることになります。
村上ファンドの行動は、当時の多くの経営者たちを脅かすものでした。株主利益の増大に努力していないと、いつ村上ファンドに株を買い占められるかわからないという恐怖を与えたのです。財界を敵に回す行動でした。
ライブドアの堀江氏の言動もまた、“良識ある世間”の眉をひそめさせるものでした。
こういうとき、検察は「国策捜査」に乗り出すもの。「金儲け至上主義で既成秩序を揺るがす行為は許されない」という世間の空気を読んで、東京地検特捜部が二人の“はぐれ者”を狙って捜査を始めたのです。私に言わせれば、二人は“国策捜査”の被害者です。
村上氏と堀江氏は逮捕され、有罪判決が確定します。これについて村上氏はこう述懐します。
〈有罪判決については、長い時間と審理を費やした裁判を経て国が判断を下したのだから、受け入れざるを得ないと思っている〉
随分と“大人”になったものです。でも、こうも付け加えています。
〈しかし私の中ではいまだに、当時のライブドアの状況と、彼らと私たちとの間でのやり取りがインサイダーに当たるものだったのだろうか、と違和感が残ったままなのも事実だ〉
どうせなら逮捕されたときの検察官とのやりとりや、“塀の中”での様子についても書いてほしかったのですが。
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