──よく、「小説の世界観をそのまま映像化してほしい」という作家の方もいますが、沼田さんはいかがですか。
沼田 僕は全くそうは思いませんでしたね。翻訳小説でも、翻訳家が入ることでまた別の作品になる。映画化に関しても、自分がそこで何か言う、ということはなかったです。すごい人たちに構っていただいて、嬉しかったです。
大友 こちらこそありがとうございます。
沼田 映画になる、というのは普通はないことですから。
大友 普段自分が撮っている作品は、エンタテインメントが多いんです。プロットの面白さ等で物語をどんどん転がしていって、興味を喚起していく。それに比べて「影裏」は、ストーリーを転がしていくというよりも、ディテールの面白さで、物語を動かしていく。人物の輪郭があいまいだけれど生々しい、そういう人物が具体的に自分の故郷・盛岡で動きだすのを見てみたい──映像化については、そういう気持がまず強かったですね。
──沼田さん、「影裏」の映画を実際に見られて、いかがでしたか?
沼田 そうですね。自分がこの小説を書くときに、まず柱としていた「水」「火」「木々」、そして空気、というか「人間関係」。映画でもこの4つがすごく鮮明に描かれて、互いに響きあっている感じがしました。そしてとにかく映像が綺麗でしたね。
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