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小説「影裏」と映画「影裏」。二人の表現者が語る、共通する世界 沼田真佑(作家)×大友啓史(映画監督)

小説「影裏」と映画「影裏」。二人の表現者が語る、共通する世界 沼田真佑(作家)×大友啓史(映画監督)

「影裏」映画公開記念対談


ジャンル : #小説

大友 文学って、切実に伝えたいものがあって、それをどういう文章で表現していこうか、という作業ですよね。「影裏」には、この歳になって初めて触れるような言葉がたくさん出てきて、そこに惹かれたのも、映画にしたいと思ったきっかけです。

沼田 僕の数少ない経験から言うと、小説を書くとき、文章よりも先にイメージが浮んできます。それも色が多い。白っぽいものを書きたいとか、ここに少し黒がほしい、とか。

「影裏」は深い青、のイメージですね。これを書いているとき、あまり調子がよくなかったので、「人生はブルー」みたいな……。途中から青すぎると思って、修正はしました。

大友 基本的に小説も映画も、追体験じゃないですか。他者の書いたものを通して、自分の知らない世界を追体験する──今回「影裏」を映像にすることで、自分が子供の頃好きだった文学の世界を少しでも応援したい、そういう気持はありますね。もちろん、文学にも映画を応援してもらって、お互い手を取り合っていきたい、といいますか(笑)。

──お二人の創作活動のなかで、原動力となっているものは何でしょうか。

沼田 僕は……「怒り」の感情、ですね。具体的な対象はなくて、それをおおっぴらにできない自分自身に対してだったり、いままさにどこか知らない世界で起きている殺人や暴力に対してだったり。もちろんそれをそのまま書くことはしませんけれども。別のことをしていても、ふっと想像してしまうんですね。

大友 沼田さんがおっしゃることは、よく分かりますね。

 あとはやはり、実際に作品を見てもらって、喜んでくれたり面白がってくれた人からの感想、ですね。それが自分の原動力になる。

「影裏」を映画にすることで、自分は新しいものを発見することができました。ぜひ映画を多くの人に見てもらって、みなさんの感想を聞いてみたいですね。

[2019年8月3日 盛岡劇場メインホールにて 聞き手:栗澤順一(さわや書店)]


沼田真佑(ぬまた・しんすけ)
北海道小樽市生まれ。その後、神奈川県、千葉県、埼玉県、福岡県と転じる。西南学院大学卒業後、両親の住む盛岡市に移り、小説を執筆。2017年「影裏」で第122回文學界新人賞受賞、また同作で第157回芥川賞受賞。

大友啓史(おおとも・けいし)
岩手県盛岡市出身。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1997年から2年間LAに留学、ハリウッドにて脚本や映像演出を学ぶ。監督としての代表作は映画『ハゲタカ』『るろうに剣心』『プラチナデータ』『3月のライオン』『億男』など。

映画『影裏』 2020年2月14日公開
今野(綾野剛)は、転勤で移り住んだ盛岡で日浅(松田龍平)に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在。遅れてやってきたような成熟した青春の日々に、今野は云いようのない心地よさを感じるが、ある日、日浅は突然姿を消してしまう。ともに時を過ごしたあの男の本当の姿とは? 感動のヒューマンミステリー。
©2020「影裏」製作委員会

©2020「影裏」製作委員会
文春文庫
影裏
沼田真佑

定価:605円(税込)発売日:2019年09月03日

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