ただ一人心を許した親友が失踪。その男の光と影に向き合ううち、やがて見えてきた“もう一つの顔”──。芥川賞を受賞した鮮烈なデビュー作「影裏」の著者・沼田真佑氏と、その繊細な世界観に惚れこみ、メガホンをとった映画監督・大友啓史氏。
2019年8月に作品の舞台・盛岡で開催された〈文学の国いわて2019〉で、二人の対談が実現した。
──お二人の出会いから、まずお聞かせください。
沼田 一年前くらいですか。盛岡の駅近くのホテルで……会いましたね。
大友 えーと、一応ですね、映画にしたいというお願いをしに参りました。
沼田 僕はとにかくドギマギしてました。緊張して……。
大友 芥川賞受賞のときのインタビューなどをみて、沼田さんは映画や音楽に詳しい人だ、油断できないぞ、と思ってました、僕は。
最初は本屋さんで、文學界新人賞をとられたときに雑誌で立ち読みして、「格好いいタイトルだなあ」と、覚えていたんです。しばらくしてから全文を読んで、ぜひこれを映画にしたい、と思いました。筋立てとか小道具とか、この小説自体がとても映像的で、一言で言うと、そそられたんですね。
文芸作品の映像化はハードルが高いのですが、芥川賞をとったら、途端にどんどん進んで……決めてからこんなに早く話が進んだ映画って、あまりないですね。
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