書評

あなたの上司に読ませて欲しい! 人望も展望もある「理想の上司」とは?

文: 高成田 享 (ジャーナリスト)

『世襲人事』(高杉 良)

『世襲人事』(高杉 良)

 この小説を読みながら、「理想の上司」という言葉を思い浮かべた。日本で最大手の大日生命に勤める主人公、広岡厳太郎の振る舞いをみていると、こんな上司がいたら仕事はやりやすいし、やりがいもあるだろう、と思う場面が何度もでてくるからだ。

 大手商社、第一物産の輸出部門の課長として活躍していた厳太郎は、父親で大日生命の社長をしている広岡俊の強引ともいえる引き抜きで、この生保の取締役として転身することになる。社内は世襲人事ではないかと騒然となり、人事には口をはさまない労組までもが「好ましい人事ではない」と会社に人事の撤回を申し入れる。

 低姿勢で臨んだ俊社長の根回しもあって、三九歳で取締役に就任した厳太郎は、生保会社の仕組みを一通り学ぶと、営業の最前線である支社での勤務を希望し、大阪の中位の支社長として赴任する。本社の次長クラスが就くポストで取締役の役職ではないが、商社マンから生保人になりきるためには、「生保のおばちゃん」と呼ばれる外務員たちと働く必要があると、厳太郎が強く求めたのだ。

世襲人事高杉良

定価:本体750円+税発売日:2020年01月04日


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