インタビューほか

人と人の心の糸は一度切れても、再び繋がる──盛岡「ホームスパン」をめぐる親子三代の物語

第二文藝部

『雲を紡ぐ』(伊吹 有喜)

「お母さんが怖い」

 実家のホームスパン工房の後を継がずに、電機メーカーの技術者になった広志。長年務めてきた会社では家電部門の縮小もあり、リストラが始まっていた。家ではそんなことも話せず、「この家に俺の居場所はない」と感じて、仕事を終えたあと、喫茶店で時間をつぶしてから帰宅していた。

 中学教師の真紀は、担任しているクラスの親や生徒と問題を抱えており、イライラを募らせ、娘の真紀にキツイ言葉を発してしまう。

「お母さんが怖い」と思ってしまう美緒は、両親の前で、うまく自分の気持ちを言えなかった。「せがなくてもいい」と言ってくれる紘次郎の言葉が、美緒の救いだった。

「一緒に暮らしていても、それぞれが孤独感を募らせてしまうことって、あると思うんです。たとえば、真紀は家族にいろんなボールを投げかけていましたが、誰からも返してもらえませんでした。
 口数の少ない広志は共感力が少し足りなくて、真紀の寂しさに気がつかない。それなのに、あるとき”娘にだけ優しく接する姿”を見て、感情が爆発し、『私の娘はオンナを武器にする!』と言ってしまうんです。
 母と娘、父と息子。同性だからこそ遠慮がなく、感情がこじれがち。互いに分かり合えなくなるときもありますよね」

盛岡市内の蟻川工房の赤いショールと、中村工房のマフラーは、着る人を温かく包んでくれる。色とりどりの羊は中村工房で取り扱っている。

 北上川にかかる開運橋の向こうに、岩手山が広がる美しい風景のなかで、家族の心情がすれ違い、交差する。

 個性豊かな喫茶店の焙煎珈琲、名物のチーズケーキ、福田パンのコッペパンなど、心を躍らせるモノに触れることで、それぞれが相手の思いに少しずつ気がついていく。

【次ページ 糸は切れても繋がる。人と人も再び繋がることができる】

雲を紡ぐ伊吹有喜

定価:本体1,750円+税発売日:2020年01月23日

ミッドナイト・バス伊吹有喜

定価:本体880円+税発売日:2016年08月04日


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