「お母さんが怖い」
実家のホームスパン工房の後を継がずに、電機メーカーの技術者になった広志。長年務めてきた会社では家電部門の縮小もあり、リストラが始まっていた。家ではそんなことも話せず、「この家に俺の居場所はない」と感じて、仕事を終えたあと、喫茶店で時間をつぶしてから帰宅していた。
中学教師の真紀は、担任しているクラスの親や生徒と問題を抱えており、イライラを募らせ、娘の真紀にキツイ言葉を発してしまう。
「お母さんが怖い」と思ってしまう美緒は、両親の前で、うまく自分の気持ちを言えなかった。「せがなくてもいい」と言ってくれる紘次郎の言葉が、美緒の救いだった。
「一緒に暮らしていても、それぞれが孤独感を募らせてしまうことって、あると思うんです。たとえば、真紀は家族にいろんなボールを投げかけていましたが、誰からも返してもらえませんでした。
口数の少ない広志は共感力が少し足りなくて、真紀の寂しさに気がつかない。それなのに、あるとき”娘にだけ優しく接する姿”を見て、感情が爆発し、『私の娘はオンナを武器にする!』と言ってしまうんです。
母と娘、父と息子。同性だからこそ遠慮がなく、感情がこじれがち。互いに分かり合えなくなるときもありますよね」
北上川にかかる開運橋の向こうに、岩手山が広がる美しい風景のなかで、家族の心情がすれ違い、交差する。
個性豊かな喫茶店の焙煎珈琲、名物のチーズケーキ、福田パンのコッペパンなど、心を躍らせるモノに触れることで、それぞれが相手の思いに少しずつ気がついていく。
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