E 普通の裁判は当事者双方に代理人がついていることも多いですし、互いがそれぞれの立場を主張するので、裁判官は法的な判断をすることがメインになります。でも、少年審判の場合は、裁判官も少年と真っ向からのやりとりをするんです。私は裁判官なのですが、そこで少年とどうかかわれるかがとても大切だと思っています。(『あしたの君へ』の)大地のように、担当した少年から手紙をもらったことがあって、こういう出会いは忘れられないですね。
C 柚月さんは、小説を書く時、先をどこまでイメージして書かれているんですか。
柚月 『あしたの君へ』は連作短編集なので、主人公の性格や、家裁調査官補であるという設定は最初から決まっていましたが、実家の家族のことなど、書きながら細部が見えてきた部分も多かったですね。『最後の証人』や『孤狼の血』も、最初からシリーズ化の予定があったわけではないので、続編をと依頼をいただいて初めて、その先の展開を考えました。
F 『盤上の向日葵』も大好きな作品なのですが、柚月さんは、棋力はどのくらいでいらっしゃるんでしょうか。
柚月 キリョク……あ、「棋力」ですね! 実は、将棋は駒の動かし方がわかる程度なんです。私の場合、もともと何かの専門家だというわけではないので、どんなジャンルでも、まずは調べるところから始めます。いまも週刊文春で「ミカエルの鼓動」という医療小説を連載中なのですが、勉強することばかりです。『あしたの君へ』を書く時も、最初は、編集者と一緒に家裁調査官の業務説明会に行きました。自分が興味を持って書いたことに読者の方が共感してくださり、さらには現場の方にまで読んでいただいて、本当に嬉しいです。
A これからも、柚月さんの作品を楽しみにしています!
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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