“江戸の介護”をテーマにした小説『銀の猫』。
発売以来、大きな反響を呼んでいる本書について、著者の朝井まかてさんが語ります。
音声メディアvoicyの「文藝春秋channel」にて配信した内容を一部、活字にしてお届け!
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<『銀の猫』あらすじ>
嫁ぎ先から離縁され、母親と暮らすお咲は、年寄りの介護を助けるプロの介抱人。
誠心誠意、年寄りと接するお咲のもとにはさまざまな依頼が集まります。
多くの病人に出会いながら、逝く人に教えられたことがお咲の胸に重なってゆき……。
江戸に暮らす家族の悲喜こもごもを、介護という仕事を通して軽やかに深く描く、傑作長編小説。
――今年の3月に『銀の猫』が文庫になりました。
どうして「江戸の介護」をテーマにしようと思われたのですか。
江戸時代、武家の主である男性は親の介護のためといって主君に届をだしたら、介護休暇がとれたんですよ。当時、家を継ぐということは、自分の子どもの教育も主がするということを意味していました。さらに、財産も地位も引き継いだ以上、親の介護も主がすることになっていたんです。
――現代からみると、意外と先進的に思えます。
みなさんが思っておられるよりも、江戸時代は合理的なところがあるのです。
親だからお世話すべき、とかいう、“べき”という考えがいかに頼りないものか、逆にそれで追い詰められる人もいるということ、人の気持ちはあてにならないことを、江戸時代の人々は分かっていたんです。
(親の介護に関して)契約書を交わしている例もあります。
この例がなんで残っているかというと、契約を守らなかったドラ息子がいたからなんですね(笑)。
今も昔も変わらず、逃げ出した人がやっぱりいたんです。
江戸時代の介護にはそんな側面があったので、当時の介護事情を探ってみようかなと思って、書き始めました。
――江戸時代は、実は長寿社会だったようですね。
それは数字のマジックと言いますか……。
子どもが亡くなることが多かったんです。
1歳、2歳、3歳と育つのが奇跡のようでした。ですから江戸の人々は、子どもを本当によく可愛がっていたようです。
よくぞ生きててくれている、という気持ちがあったのでしょう。
子どもがよく亡くなるので、平均寿命は短くなってしまうのですが、実際はお年寄りも多かった。
武士の間には、4、50代でちゃんとした人間的な成長、ひとつのまとまりをみせるという覚悟はもちろんありました。でも80代で登城しているお侍さんもいました。生涯現役です。
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