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身体と脳の寿命はアンバランス――どうすれば身体の寿命に脳は追いつけるのか

身体と脳の寿命はアンバランス――どうすれば身体の寿命に脳は追いつけるのか

新井 平伊

『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(新井 平伊)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

脳の健康寿命をできるだけ延ばす方法を探るのがこの本の目的です

『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(新井 平伊)

 脳の健康のために、何かやっていますか?

 肝臓の数値を気にしてお酒を控えたり、運動不足の解消のためにジョギングをしている人は多いでしょう。一方、脳は身体の中で最も大切な臓器で、毎日酷使しているのに、その健康状態を意識している人は少ないはずです。

 脳の働きには、γ─GTPや血糖値のようなわかりやすい目安がありません。だから自分の脳の状態がわからないし、何をすればいいのかもわからない。それが普通です。

 しかし、できることはあります。「気付いたときは認知症」とならないためにも、脳の健康に役立つ方法を知って、いますぐ取り掛かるべきです

*γ─GTP:ガンマ─グルタミルトランスペプチダーゼ。肝臓だけでなく腎臓、膵臓にも含まれる解毒に関わる酵素。肝臓や胆管の細胞が傷ついたり死滅したときに血液中で上昇する。

*血糖値:血液中のブドウ糖の濃度。空腹時の健康成人では、血液100ミリリットル中に70~110ミリグラムが適正。

日本人の平均寿命が延びた理由

 脳が健康でなくなると、どんなことが起こるのでしょうか。

 脳の話の前に、身体の寿命を見てみましょう。

 厚生労働省によると、2019年の日本人の平均寿命は、男性が81.41歳、女性が87.45歳。どちらも過去最高を更新しました。寿命が延び続けたのは、医療の進歩と健康意識の向上が理由です。

 最も大きいのは、感染症の克服です。

 過去に天然痘やペストのパンデミックが起こったとき、世界中で何百万もの人々が亡くなりました。こうした感染症を、人類は次々に克服してきました。2020年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルスも、やがてワクチンと治療薬が開発され、抑え込むことができるに違いありません。

*天然痘やペストのパンデミック:天然痘(痘瘡)は、かつてインド、パキスタン、東南アジア、アフリカ、南米などで風土病として存在し、欧米諸国や日本でも毎年のように小流行があった。1977年、アフリカのソマリアの病人を最後にして、種痘の励行によって地球上から消滅した。ペストは、元来はノミを介するネズミの伝染病。致死率は60~90%と極めて高い。中世ヨーロッパ、明治・大正時代の日本でも数回流行。サルファ剤やストレプトマイシンで治療する。近年、外国でも大きな流行はない。

 第二に、血管が関係する病気の治療が進んだことです。

 血管は全身を巡っていますから、あらゆる臓器の病気に関係します。中でも、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、動脈硬化などの生活習慣病に直結しています。近年、これらの病気の軽症段階での治療が進んだこと、生活習慣病に対する意識が改善されて予防が進んだことも、寿命が延びた要因です。

 三番目は、がんの治療が進んだことです。

 日本人の2人に1人が、がんにかかる時代です。しかし早期発見が可能になり、手術や抗がん剤や放射線による治療も進歩したため、治癒の目安となる5年生存率は大きく伸びました。昔と違い、死の宣告に等しい病気ではなくなったのです。

 このように各種の病気が克服され、公衆衛生学の知識が普及したおかげで、平均寿命は延びてきました。人生で日常生活に制限なく暮らせる期間を「健康寿命」と呼びますが、身体の健康については機能を長く維持できるようになってきたのです。

脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法
新井平伊

定価:本体800円+税発売日:2020年12月17日

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