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16世紀、「世界史」はいかにしてはじまったのか

16世紀、「世界史」はいかにしてはじまったのか

玉木 俊明

『16世紀「世界史」のはじまり』(玉木 俊明)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

『16世紀「世界史」のはじまり』(玉木 俊明)

 こうした変化が開始されたのが16世紀である。軍事革命を象徴するのは、火器の使用である。火器により、ヨーロッパは圧倒的優位をもち、世界を支配していくことができた。火器の使用以前には大きな破壊力があった弓騎兵の重要性は大きく低下し、遊牧民族の軍事的優位は失われていくことになった。後述するように、この軍事革命のインパクトは非ヨーロッパ世界にもおよんでいく。その好例が日本の戦国時代である。

 16世紀の段階ではヨーロッパは軍事的に中南米やアジアを侵略、支配したが、やがてその軍事的優位により、アフリカやアジアを植民地にしていった。さらにいえば、軍隊・戦争の規模とシステムの増大は、ヨーロッパ諸国の国家体制をも変えた。

 宗教改革とは、いうまでもなく、1517年にマルティン・ルターが「九十五カ条の論題」を出したことにはじまる。これにより、西欧世界ではカトリックに加え、プロテスタントが誕生した。この二つの宗派はいがみ合い、何度も宗教戦争が生じたが、筆者の考えでは、この宗教改革自体は、西欧世界内部の出来事にすぎない。世界史的にみて、より影響が大きかったのは、カトリックによる対抗宗教改革である。その代表的な例がイエズス会なのである。彼らのヨーロッパの枠を超えた布教活動が、ヨーロッパ世界の拡張の原動力の一つとなった。

 もう一つ、宗教改革は、より大きな変化と結びついている。それは、市場化である。16世紀は、取引所の創設をはじめとする、商業機関、商業活動のためのツールが大きく発展した時代でもある。商業活動のツールとして、ヨハネス・グーテンベルク(1398頃~1468)によって発明された活版印刷がある。いくつもの商業情報が、印刷されて西欧各地に出回っていった。

 15世紀のドイツで、グーテンベルクが活版印刷術を発明したため、徐々にではあるが、文字はかぎられた人だけではなく、一般の人々も読むものに変わっていった。歴史家はこれを、「グーテンベルク革命」と呼ぶ。

 宗教改革に関係した人々は、自分たちの学説をパンフレットにして出版、見本市で販売した。それにより彼らは、自分の学説を世に知らしめただけではなく、経済的利益を得たと考えられる。宗教改革者の見本市でのプロパガンダ合戦は重要な布教手段、さらには金銭を得る方法になった。すなわち、この時代には市場化が進み、宗教改革は、市場化と深く関係して展開していったのである。

16世紀「世界史」のはじまり
玉木俊明

定価:968円(税込)発売日:2021年04月20日

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