米中対立はさらに進み、英仏独も中国包囲網に参加! 高まる日本への「期待」とは?
- 2021.07.29
- ためし読み
現在、日本の世論がどのように認識しているか、私は詳しくは知らないのだが、国際政治における日本のステータスに変化が起きている。これはもっと知られていいことだ。
アメリカではバイデン政権に交代したことで大きな変化が起こった。ことに台湾をめぐっては、2021年4月の日米首脳会談で新たなステートメントが出された。
一方、欧州は欧州委員会という官僚組織のおかげで、一見、大きな変化は起きていないように見える。その欧州が、これまで日本をどのように見ていたかといえば、正直なところ、「中国との関係を深化させていこう。日本? どうでもいいのでは?」という態度だった。彼ら欧州の指導者たちの東アジアに対する最大の関心事は、中国との投資協定だった。中国では労働力が使いたい放題であり、労働団体は自由に結成でき、強制労働のようなものは存在しない──。それが、たった数カ月前までの欧州の官僚や高官たちの考えていたことだった。アメリカの不満や日本の懸念など知ったことかという態度で、とにかく中国とビジネスをしたかったのだ。そして2020年の年末、実際に投資協定が大筋合意に至ると、欧州のエリートたちは両手を挙げて祝福した。ところが2021年5月になると、欧州議会では中国の印象が劇的に変化し、その合意が拒否されてしまったのだ。それは、本書で詳しく述べる、中国の外交戦略の根本的な失敗が招いたものだ。
こうした欧州の変化が端的にあらわれたのが、6月にイギリスのコーンウォールで開催されたG7サミット(主要7カ国首脳会議)である。そこで露わになったのは欧州側の「優先順位」が一変したことだ。最も大事なパートナーはアメリカ。このランクは不動で、トランプ時代でさえ変わらなかった。ところが「その次に大事な国」として、日本が浮上してきたのだ。
欧州各国は、西側諸国の利益のために、東アジアに積極的に関与しなければならないという国際的な圧力にさらされている。イギリス、フランス、ドイツもそうだ。そして、これまで彼ら欧州勢がアジアで最も重要なパートナーだと考えてきたのは、疑いもなく中国だった。それがいまや、日本を民主的価値を共有する西側諸国のリーダー国のひとつであると、あらためて認識しはじめたのである。
こうした認識の変化は、英空母「クイーン・エリザベス」の極東派遣としてもあらわれている。ちなみに私はこのような事態を、2015年、『中国4.0』(文春新書)の取材のために日本に滞在していた頃に、すでに訳者の奥山真司氏を含む、多くの日本の関係者たちに予言していた。それは「イギリスは将来シンガポールの東側で空母を運用することになる。シンガポールを拠点にすることもありうる」ということだった。
このように、欧州からの日本への期待は高まっている。そうなると、日本にとって大事なのは、その返礼である。今度は海上自衛隊が船を出し、国際的な共同軍事演習に参加する番なのだ。
フランスの軍艦はベンガル湾を越えて、台湾海峡を通過し、日本まで来ているのだ。すでにインド洋などではインドとの海上合同軍事演習も行っている。このような動きに日本も加わるのである。これに他の国々を加えてもいい。日本の防衛省は目覚めなければならない。
軍事レベルにおいて、日本は2国間での演習などには慣れている。それを多国間に拡大するのである。海上自衛隊の艦艇は、イギリス、フランス、オランダだけでなく、ドイツの港にも寄港すべきだ。欧州近辺への艦船の派遣や、欧州における軍事演習への参加など、日本が「パートナー」としてのプレゼンスを示すことを、欧州諸国は求めるようになるだろう。これが「海洋国家の国際ネットワーク」が中国を包囲しつつある現代において、日本が期待されているポジションなのである。
(「日本の読者へ」より)
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