韓国人の学者たちが韓国国民に向けて書いた『反日種族主義』の副題は、「大韓民国 危機の根源」であった。韓国社会における「反日」はその是非を問われることなく、長きにわたって無条件に韓国人を縛り付けてきた。善か悪か、正義か不正義か、理性か感情か、そうした価値観では、少なくとも公の場所で「反日」を覆すことはできない。「反日」とは、韓国では絶対的な価値観であり、歴史観だと言えるだろう。
それだけに、最大のタブーである「反日批判」に真っ向から挑戦した『反日種族主義』という本の登場は、韓国社会に大きな衝撃を与えた。2019年7月に出版された同書は韓国でベストセラーとなったが、李栄薫氏をはじめとする執筆グループや彼らを支える支援者たちの闘いは始まったばかりで、むしろこれからがより茨の道になるだろう。それでも韓国人が「反日の歴史観」を乗り越えなければ、大韓民国の本当のアイデンティティーを獲得できないという確信が、彼らにはある。
その『反日種族主義』の日本語版(李栄薫編著、文藝春秋、2019年刊)の副題は、何の違和感もなく「日韓危機の根源」に決まった。日本人が実感しているのはまさしく「日韓関係の危機」の方である。それは「反日種族主義」が日韓関係の基本的な法的基盤を棄損し、指導者同士の信頼関係を破壊し、日米韓の軍事的な安全保障さえも危うくしているからだ。
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