2021年8月12日、羽田圭介さんの新刊小説『Phantom』の1on1オンライン個別サイン会を開催しました。talkportを利用して、羽田さんが読者の方と1分間ビデオ通話でお話をしながら『Phantom』にサイン。サイン本は後日、参加者の皆様にお届けしました。ご自身初の試みになったこのサイン会について、羽田さんが体験記を書いてくださいました。
新型コロナが流行する前まで開かれていた通常のサイン会では、まず席から立ち上がってお辞儀し、サインを書き、お客さんと握手をしツーショット撮影に応えたあと会釈、という流れでずっとやってきた。会によっては、手作りクッキーを配ったりもしていた。書店や出版社主催のサイン会は東京や大阪だけで、それ以外の地域でのサイン会は、イベント等の仕事のついでとして開催したりしていた。だからほとんどの場合、東京や大阪でのサイン会のために、わざわざ新幹線や飛行機に乗り遠方からやって来てくださる方がいらっしゃり、申し訳ない気持ちにもなった。
それがオンラインサイン会だと、日本全国どころか海外の方とも簡単に話せる。今回実施して最も新鮮に感じたのは、お客さんの背景が画面越しに見えるということだ。今までは、サイン会場のテーブルに自分は二時間前後ずっと座ったまま、やって来るお客さんに応対していたわけだが、今回は自分のほうから、お客さんの生活圏内へお邪魔しているような気分だった。もう何回も来てくださる常連さんの背景が意外なものだったりして、生活が変わったのかなとか、そこから話題が広がったりした。
また、時間の枠が決まっているからこそ、参加してくださるお客さんたちは全員、会話が滞ることがなかった。開催時間中、皆さんと大いにおしゃべりを楽しめた。
コロナ禍での緊急事態宣言中に開かれた1on1でのオンラインサイン会だったが、事態が収束してからも、サイン会の一つの形として定着してゆくと思う。