1989年に、台湾の台北市仁愛路のロータリーから人文とアート関係の専門書店としてその第一歩を踏み出した誠品は、現在、台湾、香港、蘇州および東京に計44ものサービス拠点を設置。書店、ギャラリー、ホール、小売り、ホテル、グルメなど、複合的な文化のトポスとなっている。
その誠品が初めて中華文化圏を出て、日本で展開した「誠品生活日本橋」。現在、2年目となるスタッフの賴さんが熱烈に推す一冊は、台湾を代表する劇作家・紀蔚然が初めて書いた探偵小説、『台北プライベートアイ』だ。発表時から大きな話題となり、台北国際ブックフェア大賞を受賞。各国で翻訳版が刊行され、日本では2021年の「週刊文春ミステリーベスト10」の9位に選ばれるなど、近年人気の華文ミステリーのなかでも注目を集めた。
「刊行されて、すぐに買って読みました。現代の台湾を舞台にしていて、実在の道や店がたくさん出てきます。台北に行った人はそれだけでわくわくすると思いますし、行ったことがない人は地図アプリで実際の街の様子を具体的に想像できます」
劇作家で大学教授でもある呉誠は、ある日、酒席で出席者全員を辛辣に罵倒してしまう。恥じ入った彼は芝居も教職もなげうって台北の裏路地・臥龍街に隠棲し、私立探偵の看板を掲げるが、台北中を震撼させる六張犂連続殺人事件に巻き込まれ、警察から犯人と疑われる羽目に陥る。呉誠は己の冤罪をはらすため、自分の力で真犯人を見つけ出すことを誓う。もともとミステリー好きで、台北出身の父を持つ賴さんは作品世界に強く惹かれた。
「登場人物になった感じがして、とても入り込みやすい作品です。台湾の社会的状況をうまく利用して、とてもリアルでした。主人公が事件に巻き込まれていく様子がテンポよく、スリリングに描かれていて目が離せません。小説のジェットコースターとも言える作品だと思います」
監視カメラが路地の隅々まで設置された台北で次々と殺人を行う謎のシリアルキラー〈六張犂の殺人鬼〉の正体は――現代の台北を感じられる一冊だ。
「オール讀物」2022年5月号の特集は〈読む、台湾。〉
「オール讀物」5月号は創刊以来初となる特集〈読む、台湾。〉。台湾をテーマにした創作、対談、エッセイ、コラムなどが勢ぞろい。さらにもうひとつの特集は〈人気作家豪華短編傑作選〉。そのほか充実したコンテンツ満載です!
読みどころをご紹介した記事はこちら。
ゴールデンウィークは日本橋で〈台湾〉を旅しよう!
〈読む、台湾。〉特集にちなみ、誠品生活日本橋では、「オール讀物」5月号で紹介されている書籍を集めたブックフェアを2022年4月22日(金)~5月22日(日)の期間で開催します(期間変更の場合もあり)。
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