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直木賞候補作家インタビュー「女性同士の運命的な愛の物語」――一穂ミチ

直木賞候補作家インタビュー「女性同士の運命的な愛の物語」――一穂ミチ

インタビュー・構成:「オール讀物」編集部

第168回直木賞候補作『光のとこにいてね』

出典 : #オール讀物
ジャンル : #小説 ,#エンタメ・ミステリ

『光のとこにいてね』(一穂 ミチ/文藝春秋)

「熱海で温泉につかりながら、友達と絶景を眺めたときに、この風景は、男女の関係なら見られないんだな、と思ったのが、この話の始まりでした」

『スモールワールズ』で吉川英治文学新人賞受賞、本屋大賞第三位になった一穂ミチさん。候補作は、二人の女性の四半世紀にわたる愛の物語である。BL小説でも熱い支持を受けてきた一穂さんだが、女性がメインの話を書きたいという思いがあった。

「今作は、シスターフッド小説ではありません。彼女たちは、同じ方向を向いているわけではなくて、お互いだけを見ている。非常に閉じた関係の二人なんです。ともに乗り越える壁も、手を取り合う戦いもないんですね」

 母親にこっそり連れ出された先の団地で、果遠(かのん)という少女に出会った小学二年生の結珠(ゆず)。同じ年の二人は、結珠の母親が「ボランティア」と称して秘密の行動を取るのを待つ間に、団地で遊ぶ仲となる。

 裕福な家庭だが、家族に顧みられることのない結珠と、母子家庭で、隣人女性の飼うインコだけが慰めの果遠。

「家庭の中の苦しみは人においそれとは話せないですよね。でも、結珠と果遠は、お互いにいちばん苦しい部分を知っている相手。大変だねと言葉にしなくても、なんとなくわかってくれて、傍にいてくれる存在なんです」

 互いを必要とし合っていたのに、自らの意思と反して、突然の別れを迎えた二人は、進学先の高校で再会を果たす。お互いの成長と感情の変化に戸惑いつつも、新しい関係を築こうとするが、ふたたび引き離されてしまう。

 やがて、小学校教師になった結珠は、体調を崩して休職してしまう。夫と移住した先で、またしても運命的に出会ったのは、結婚し、夫と、娘と三人で暮らす果遠だった。

「一章から二章で八年、そして三章までで、さらに倍近い時間が流れています。少女から大人になる過程で、二人の環境が大きく変わるのには、それだけの時間が必要だと思いました」

 運命に翻弄されてきた結珠と果遠の関係。ふたりは、真に望む人生をつかみ取ることができるのか。

「連載の最終回を書いている時すらも、どうしようか考えていました。でも編集者から、結珠のがんばるところを見たいと言われて。彼女たちが選んだ道を読者の方がどう受け止めるかという怖さはありますが、カタルシスのある物語にしたかったんです」

 果遠が結珠に幾度も願った「光のとこにいてね」という言葉の先にある未来とは――。

 深い愛に引き込まれる物語だ。

一穂ミチ(いちほ みち)

二〇〇七年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。二二年『スモールワールズ』で吉川英治文学新人賞受賞、本屋大賞第三位。著書に『イエスかノーか半分か』『砂嵐に星屑』等。


第168回直木賞選考会は2023年1月19日に行われ、当日発表されます。

(「オール讀物」1月号より)

単行本
光のとこにいてね
一穂ミチ

定価:1,980円(税込)発売日:2022年11月07日

電子書籍
光のとこにいてね
一穂ミチ

発売日:2022年11月07日

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