〈「ちょっと堺さんのことを…」初めて銀行員を演じた阿部サダヲの「倍返しだ」が“本家”とは違うところ〉から続く
春を彩る風物詩、日本アカデミー賞授賞式が3月8日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で開かれた。
今年で47回目を数えた日本アカデミー賞は、最優秀主演男優賞に役所広司(『PERFECT DAYS』)が選ばれ、高倉健に並ぶ史上最多4回目の受賞となった。
また、昨年に続き安藤サクラが最優秀助演女優賞(『ゴジラ-1.0』)を受賞。さらに、続く最優秀主演女優賞(『怪物』)も受賞し、安藤は「まさかの展開に、声も出なくって……」とたじろいだ。
最優秀作品賞には『ゴジラ-1.0』が輝き、脚本賞、助演女優賞ほか8部門で最優秀賞を受賞する結果となった。
阿部サダヲが明かした新人脚本家・ ツバキミチオとは……
会場がどよめいたのは、『シャイロックの子供たち』で優秀主演男優賞を受賞した、阿部サダヲの発言だ。
司会の羽鳥慎一アナウンサーから「今日会場で話を聞いてみたい方がいると伺ったのですが」と振られた阿部は、「脚本の池井戸さん……あ、ツバキミチオさんです」と言い淀みつつ、「原作が池井戸潤さんで、現場に何回かいらして。でも、今日受賞されたツバキさんが、どうも池井戸潤さんなんですよね……、現場に来ていた池井戸潤さんと同じ人だったんで」と、脚本を書いた“ツバキミチオ”が、実は原作者の池井戸潤であることを明かしたのだ。
阿部サダヲに正体を明かされ、池井戸は「内緒なんですよ、それ。ばらしちゃダメじゃないですか(笑)。“不適切にもほどがある”よ」と阿部主演のドラマタイトルにかけて答え、観客席からは拍手が。「今まで原作ばかりだったので、脚本の方がいいなと思って。次もまた書きたいですね」と続け、会場を沸かせた。
原作小説『シャイロックの子供たち』(文春文庫)は、メガバンクの小さな支店で起こった現金紛失事件を皮切りに、その裏に透ける行員たちの人間的葛藤を描く群像ミステリだ。
タイトルにある「シャイロック」とは、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する強欲な金貸しのこと。物語のなかで銀行員たちは、金をとるか、自らの信念を守るか、日々突き付けられながら、自らの生き方を模索していく。
一方映画『シャイロックの子供たち』は、原作小説とは全く異なるオリジナルストーリー。100万円の現金紛失事件から、とてつもない不祥事が明らかになる。下町の行員らが、メガバンクを揺るがす巨額詐欺事件をめぐる闇を暴いていく。
主演の阿部サダヲのほか、わきを固める上戸彩、柄本明、橋爪功、玉森裕太らが熱演。ミステリであり、社会派サスペンスともいえる映画に仕上がっている。
池井戸潤が紡ぎだした小説と映画、ふたつの「シャイロックの子供たち」を楽しんでほしい。
シャイロックの子供たち
発売日:2013年08月02日
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