本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
「ちょっぴりビターな感動青春小説」「これまで額賀先生が描き続けてきたものがぎゅぎゅっと詰まった」額賀澪さんデビュー10周年記念作『天才望遠鏡』は、一筋縄ではいかない大人な読み味。

「ちょっぴりビターな感動青春小説」「これまで額賀先生が描き続けてきたものがぎゅぎゅっと詰まった」額賀澪さんデビュー10周年記念作『天才望遠鏡』は、一筋縄ではいかない大人な読み味。

『天才望遠鏡』(額賀 澪)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『天才望遠鏡』(額賀 澪)

 24歳のときに『屋上のウインドノーツ』でデビューして以来、青春や音楽、スポーツにお仕事と幅広いジャンルの作品を生み出してきた額賀澪さん。デビュー10周年の節目に選んだテーマが「天才」です。史上最年少でプロ入りした中学生棋士、タピオカミルクティーの味もマカロンの味も知らない、かつての「氷上の妖精」、気がつかぬままに抜群の歌声を持ち、オーディションを駆け上がる天才中学生……。

 5つの天才とその姿をそばで“観測”していた者たちを描いた連作短編集に、書店員さんからの熱い感想がたくさん届きました。(第4回/全4回予定)


ジュンク堂書店広島駅前店 大貫愛理さん
額賀先生、作家デビュー10周年おめでとうございます。私が書店員になった2019年に、文芸書の品出し中に出会って以来、過去作も遡って読み続けて来ましたが、率直に、10周年記念にふさわしい作品だと思いました。青春、部活、音楽、駅伝、スポーツ、仕事、才能と挫折、努力と限界、喪失と再生、覚悟と矜恃、これまで額賀先生が描き続けてきたものがぎゅぎゅっと詰まった、ほろ苦くて寂しいような、でもあたたかみのある短編集だと感じました。
かつての天才、今をときめく天才、才能はあっても天才にはなれなかった者、非凡な才能を見出されぬまま大人になる者、天才でもなければ凡人でもない者。
私たちは、天才か凡人かという二軸で分けられるほど、決して単純で揺るぎない存在ではなく、天才にもそうでない人間にもなり得る。天才の周りには、たくさんの人間がいる。近くにも、遠くにも。天才の外側にいる人間の、天才の観測の仕方は様々で、きっと私たちの多くは、その1人だ。
「星の盤側」で将棋の天才、「妖精の引き際」でフィギュアスケートの天才を描いた後に続く「エスペランサの子供たち」は、才能を取り上げるうえで看過することのできない格差問題に切り込み、それはまるで、この『天才望遠鏡』という作品に深く打ち込まれた楔のようだった。
また、作品を通して一貫された多々良の仕事人ぶり、「夜と跳ぶ」シリーズの与野に通じるものがあり、好きでした! 仕事に矜恃を持っている大人はかっこよくて憧れます。
『星原の観測者』で、天才と才能の関係を星になぞらえるのは秀逸だった。よく天才のことを「スター」と表現することがあるけれど、天才と呼ばれる者だけが、才能のある人間ではない。天才と名付けられなくたって、才能はある。見える星もあれば見えない星もあるように、見る人によっては才能だとわかる。大事なのは、天才でなくても、その才能に気づき、認めている・評価している存在がいるということ。『カケルの蹄音』のズットカケルと競馬ファンや『星原の観測者』の星原イチタカと釘宮志津馬の関係性のように。
才能は星で、見える星もあれば見えない星もある。私たちはこの先、自分に対して、誰かに対して、何を見つけられるだろうか。
自分の人生、当たりでもハズレでも、夢や才能に終わりが訪れても、憧れが諦めに変わっても、それでも自分にとっての矜恃を胸に、時々夜空を見上げて星を見つけては生きていけたらいい、そんなふうに思えた。

三洋堂書店新開橋店 山口智子さん
これまで多くの心震える青春小説を書かれてきた額賀さんのデビュー10周年記念作にこれほどまでふさわしい作品があるだろうか!
才能ある人の中の一握りの天才と呼ばれる人と決してそこには手が届かない多くの人達。かつて天才と呼ばれても才能はいつか終わる時がくる。夢を諦めたことがある人はきっとこの作品の登場人物の誰かに自分を重ねるだろう。切なくも美しいだけでなくたくましさもある、こうありたいと思う人生そのもののような作品集でした。

京都大学生協ブックセンタールネ 津田遥音さん
夢に人生を賭けて挑む才能溢れる若者。それを側から観測する非天才。その夢が潰えてしまった人やこれから挑戦する人。そんな夢と向き合う色々な人の本気の物語。天才はその才能と期待に蝕まれ、非天才は期待もされず、有象無象だと誰にも見てもらえないそんな苦しみが詰まっている。でも誰か本当にあなたを理解してくれる人がその有象無象の星空から輝きを観測してくれる、そんな美しくあたたかい物語だった。あなたもこの望遠鏡を覗いて、星の輝きを楽しみませんか。

うさぎや矢板店 山田恵理子さん
小説を書きたいという気持ちが、
小説を読みたいという気持ちが、
夜空に瞬く星のように、
無尽蔵に湧いてくる作品です。
作家デビュー10周年おめでとうございます。

高坂書店 井上哲也さん
著者デビュー10周年記念作品!
各界の五名の天才と、彼等を側で見ている観測者達を描いた短編集。
天才と凡庸な者との違いは何か?
夢は途切れることが無くても、才能は枯れる時が来る…….
青春真っ最中の若人にも、かつて若者だった大人達にも読んで貰いたいちょっぴりビターな感動青春小説。
著者の新たなる代表作の誕生である。

TSUTAYAサンリブ宗像店 渡部知華さん 
自分とは程遠い世界にいる天才の眩しさと生き様に熱を感じて、その天才の観測者に勇気をもらえる物語。とくに最後の「星原の観測者」には、ぐっと心を持っていかれました。
誰もが認める天才と、誰かが認めている天才が存在していて、その天才の観測者がいる。
この物語を読むと、何者でもない自分にも過去、現在、未来のどこかに観測者がいるのかもしれない。そんな風にも思えてきて、心がふわっと軽くなりました。
また、天才の才能が枯れていく儚さと、それでもその先を生きていく力強さに胸を打たれました。
夢には終わりがないのだから、次の夢へそのまた先へ……と、読者の背中を押してくれるような作品でした。
私も今、心が弾むような、スキップしたくなるような読後感に浸っています。
素敵な作品をありがとうございました!

元書店員 河野邦広さん
スポーツカメラマンの多々良はスポーツ誌編集長に最年少天才棋士の対局の取材を依頼される……。そしてのその対局相手も、「元」最年少天才棋士だった……。
「元」天才棋士の現在、金メダリストの引退間際の現在、怪我で競技を引退せざるをえなくなった少年と、何らかの理由で才能を発揮できていない、できなくなった「元」天才たちの状況が綴られる。ピークを過ぎた、さらなる才能、怪我、貧困と理由が様々なように、当人たちの諦念も含んだ納得、あきらめきれない困惑、自信喪失の悲しみと状況も様々だ。さらには近しい周囲の人の心配と期待、また観客たちの勝手な期待や不満と、混乱ともいえる様子は、それまでに得た栄光とバランスをとるようでもあり、なんとも皮肉だ。それでも受け入れて踏み出していく姿は天才、凡人拘わらず人の生き方そのものであり心強くもある。
様々な感動を与えてくれる「天才」、近しい周囲の人、観客までをも含んだ群像劇。

紀伊國屋書店エブリイ津高店 髙見晴子さん
「天才」という光の後ろにいる私は影? いや違う。「私」は「私」。
私も誰かにとっての光なのかもしれない。
「天才」達を見ながらそんな事を思った。
私の夢は何だったろう……。まさに「将来の夢」を思い出せない大人だ。
この作品を通して「夢」を考えてみたい。そう思える作品でした。
額賀先生、10周年おめでとうございます!!

単行本
天才望遠鏡
額賀澪

定価:1,760円(税込)発売日:2025年07月11日

電子書籍
天才望遠鏡
額賀澪

発売日:2025年07月11日

プレゼント
  • 『圧勝の創業経営』

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募締切 2025/07/26 00:00 終了
    賞品 『圧勝の創業経営』5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る