- 2015.05.28
- インタビュー・対談
『ラリルレ論』刊行記念 野田洋次郎インタビュー
「必死で生きてる皆さんに、読んで欲しいです」
「本の話」編集部
『ラリルレ論』 (野田洋次郎 著)
ジャンル :
#随筆・エッセイ
超人気ロックバンドRADWIMPSのVo&Gtで、全楽曲の作詞作曲を行う野田洋次郎さんの初エッセイ『ラリルレ論』が刊行されました。 深い思索の末に辿り着いた哲学的な言葉が綴られ、発売されるや否や品切れ続出となった本書は、どのようにして生まれたのでしょうか。
――まず、本を書いてみての率直な感想を聞かせて下さい。
思っていたより大変でした。自分はそんなに沢山本を読んだり新聞を読んだりはしないので、自分の言葉とはいえ、こんなに活字が脳に送り込まれることってなかったから、まず単純に刺激的な時間でした。活字は記録ですよね。その時の自分の残像や気配が明確に残るので、読みながら気付かされることや、新たに自分の感覚を刺激してくれることがあって、それは本を作ってみないと分からない喜びだと思いました。
――そもそも、何で日記を書いてみようと思ったのでしょう。
ツアー中は本当に暇で、やたらと時間があるんです。昼過ぎにホテルに入って、街を散策したりするのだけど、夕方にはホテルに帰ってくる。それから酒を飲むわけでもなく、ライブの前日は弁当を食べたりしながら15時間くらいずっと部屋に一人でいるんですよ。今までは漫画を読んだり映画を観たり、本当に時間を潰すのが大変だったんです。かといって曲を作るというのはちょっと違うと思っていて、それはやらないほうがいいなと。あくまで音楽のアウトプットはライブだけに絞りたかった。それで暇な時間を使って日記でも書いてみようかなというのが入り口でした。
――まさかこんな分量になるとは思わなかったのでは。
人って本当に忘れていく生き物だから、自分がこんなに思考を巡らせて生きているのだということに初めて気付いたんです。普段どれだけのことを考えているかわからなくて。日記に書いていても過ぎ去ってしまうものもあるけれど、やっぱり捕まえておきたい思考もあって。ああ、俺はこんなところに世界との距離や違和感を感じるんだな、とか。ちょうど三十歳になるところだし、これから自分がどんなふうに変わっていくんだろうということを知るためにも、今の自分を残しておきたいと考えたんだと思います。書き始めてみたら、それが快感にもなっていきました。
――読んでいて、ここまで深く考えて日々を過ごしていたら辛いんじゃないかと思うことすらありました。ごくプライベートなこともオブラートに包まずありのままに書かれていますが、そこに躊躇いはなかったですか。
それは曲を出すときの気持ちに近くて、自分の喜びや感動をそのまま出したいと思ったし、これが世間に出たら世の中の人がどう思うかとかはあまり考えていないんです。単純に面白いと思ったことや、これはいいなと思うことを素直に文章にして世の中に残しておきたいなと。あとになって、やっぱりこれは恥ずかしいなと思うことはたくさんあったんですけど、そうやって生きている以上は仕方ないですよね。
――読み進めていくうちに、本は素材を全部出す作業で、音楽は研ぎ澄ませていく作業なのかなと想像してしまいました。文章を書くことと音楽を作ることの違いは、どこで感じましたか。
洗練を目指すのではなく、日常や駄文ありきで作っていったほうが抑揚や陰影が生まれるということは、本を作っている時に篠くん(※担当編集者)に言われたとおりだったかな。でも、文章を書くことと詞を書くことはまったく違いますね。文章を書くときは筆を止めないんです。極めて即興的というか。だから、一度パソコンで書いた文章が消えてしまったことがあって、もう一度同じ文章を書こうとしても、まったく違うものになってしまいました。それは衝撃的でした。本の文章はその時の気温や体温やいろんな要素がからみ合って、その時だけしか出てこない生々しい物だったんです。歌詞は5分とかそういう尺の中で、筆を止めて、ピークを考えたりしながら書かないといけないから、本を書くというのは、一般的な作詞とは全く違った作業でした。
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