書評

笑いあり、涙あり……
普遍的な大人のための青春小説

文: 柴口 育子 (ライター)

『帰ってきたエンジェルス』 (越智月子 著)

「もしかして、どこかで私たちのことを見てた?」 思わずそう思ってしまったぐらい、私たちの人生を写したような小説だった。

 物語はかつてグループサウンズ(GS)のトップで輝いていたジ・エンジェルスのメンバー四人のうち三人が集まって開いたコンサート(決してライブではない)で幕を開ける。そして、終了間際にボーカルのハリーから、喧嘩別れしたジョニーも戻り、来年の二月四日、解散コンサートを開いた武道館で四十四年ぶりにエンジェルスが再結成すると発表された。

 この設定を読むと、嫌でもジ・エンジェルスのモデルはザ・タイガースだとわかる。ハリーはジュリー、ジョニーはトッポ、たびたび挿入されるエンジェルスの歌も衣裳も振りも、すべてタイガースをなぞっていて笑ってしまうぐらいだ。しかし、この小説の主人公は彼らではない。

 中一のとき、東京の私立恵和女学院の仲良しグループで「エンジェルス親衛隊」を結成した久子、真理、留美子、京子、君子の五人がヒロイン。すでに五十八、九歳のアラ還世代だが、君子を除いた四人はハリーたちのコンサートを見るために久々に集まり、少女だったときと同じように熱狂して叫ぶ。

 私たちも都内の私立女子校に通い、中学生の頃からGS好きで、トッポ抜きのコンサートに当時の仲間が集まって、ジュリーが「来年は全員でタイガースが再結成できるかも」と言ったのに熱狂したクチだ。

 コンサート終了後、エンジェルス親衛隊が飲みに行った店で「あたし、ハリーと二度も眼があっちゃったのよ」「違うわ。ハリーが見たのはあたしよ」と言い争うのにも笑った。これ、私たちが中高生のとき、タイガースのコンサートの翌日になると必ずあった喧嘩である。

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帰ってきたエンジェルス
越智月子・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2014年11月10日

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