「ポーカー」のトランプVS「チェス」のイラン

『なぜ米国はイランに負けたのか』(齊藤貢)

 トランプ大統領が「ポーカー」(予測不可能性と直感で勝負する短期決戦)をやっているのに対して、イラン側は「チェス」(一手一手、理詰めで考える持久戦)を指している。異なるルールで同じゲームをやっているから、互いに相手の「意図」を読み間違ってしまう。

 トランプ大統領は、交渉(ディール)で有利なポジションに立つために、まず「高めのボール」を投げます。「ブラフ」(ポーカーで弱い手札なのに強い手札のフリをして相手の判断を誤らせる「はったり」や「虚勢」)をかけるわけです。ところが、イラン人にはそもそも「ブラフ」という発想がない。「高めのボール」をそのまま真に受ける結果、互いの「意図」を超えて事態がエスカレートしてしまう。

 イラン側は、巧みな「非対称戦略」で米国を「持久戦」に引きずり込み、徐々に形勢を逆転させていきました。「ホルムズ海峡の封鎖」によって、「ガソリン価格」を高騰させ、11月に中間選挙を控えるトランプ大統領を追い詰めていった手腕は実に鮮やかでした。

 イランは、「軍事面」での劣勢を、「政治戦」「経済戦」「心理戦」で補う構図を見事につくり出したのです。米国の航空戦力や海軍力と真正面から競えば、「戦術的」に勝ち目はない。しかし、相手の政治的脆弱性を突くことで主導権を奪う──

 いま、世界最強の軍事力を誇る米国のトランプ大統領を最も苦しめているのが、ガソリンスタンドの「ガソリン価格」であるのは、究極の逆説ではないでしょうか。

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7月の文春新書

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  • タイトル
    なぜ米国はイランに負けたのか
    著者名
    齊藤貢
    発売日
    2026/07/17
    作品紹介
    「ポーカー」のトランプVS「チェス」のイラン
    “世界最強”の米軍に対し、安価な兵器とホルムズ封鎖という「非対称戦略」でトランプを追い詰めたイランの底力を明らかにする。
  • タイトル
    大論争 この国の守り方 戦後日本の戦争論
    著者名
    片山杜秀
    発売日
    2026/07/17
    作品紹介
    戦後知識人は今よりずっと国防に熱かった!
    冷戦下の日本では今以上に激しい国防論争があった。単独講和VS全面講和、福田恒存と清水幾太郎の激論など、思想のドラマを紹介。
  • タイトル
    ヒロシマ、ナガサキ 隠された真実
    著者名
    三山秀昭
    発売日
    2026/07/17
    作品紹介
    戦後80年、あらためてファクトを問う
    広島、長崎の原爆をめぐっては、いまなお様々な「神話」がつきまとう。研究、調査の蓄積をもとに、あらためて「真実」を追い求める。
  • タイトル
    完全版 インパールの戦い
    著者名
    笠井亮平
    発売日
    2026/07/17
    作品紹介
    英で発見された新資料から見えた真実
    インパール作戦を英軍側の視点を交えて紹介した著作の完全版。著者が発見した英の資料館に眠っていた日本軍将兵の日記の中身とは。