本書では、「皇国史観」をキーワードに、講義形式で明治から現代まで、近代日本の歴史観、政治思想をみていきたいと思います。大変な大風呂敷で、うまく畳めますかどうかわかりませんが、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。
そもそも「皇国史観」とは何でしょうか? 私どもを含む戦後の教育を受けた世代にとっては、「非理性的でファナティックな歴史観」であり、「戦争の時代に国民を動員するための強引な仕掛け」といった印象が強いのではないでしょうか。平凡なやり方で恐縮ですが、辞書的な定義から確認しておきましょう。「広辞苑」を引いてみます。
<国家神道に基づき、日本歴史を万世一系の現人神(あらひとがみ)である天皇が永遠に君臨する万邦無比の神国の歴史として描く歴史観。近世の国学などを基礎にして、十五年戦争期に正統的歴史観として支配的地位を占め、国民の統合・動員に大きな役割を演じた>
確かにこの定義は大切なのですが、「近世の国学などを基礎にして、十五年戦争期に正統的歴史観として」というところは、ずいぶん派手に飛んでいると思いませんか。江戸時代から昭和に飛躍している。まさか昭和になって、いきなり江戸時代の国学が思い出されたのではないでしょう。儒学や国学があって、明治維新があり、そこで作られた国家の枠組みに「皇国史観」的なものがあって、昭和の戦争期に前にぐんと出てくる。そういうことでしょう。
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