ジャンルを問わず幅広く鮮烈なエンタテインメント小説を募集する松本清張賞。第33回の受賞作は森山世衣さんの『ひなたの中継点』に決まり、先日贈呈式が行われました。
『ひなたの中継点』は全国高校駅伝優勝をめざす女子陸上部を舞台に、ひたむきに“走ること”に向き合う部員たちの姿と、彼女たちに相次いで降りかかる不審な出来事をめぐる謎を描いた青春×スポーツ×ミステリ小説です(9月下旬、単行本刊行予定)。
受賞を記念して森山世衣さんによる「受賞のことば」を掲載します。
このたびは身に余る賞をいただき感謝申し上げます。賞の名を背負う作品となること、そして、私にとって格別の贅沢品である、まっさらな新刊本として出版されることに身の引き締まる思いです。
本作は高校生が奮闘する物語ですが、現代を生きる高校生たちにとっても、本はそう気楽に手に取れるものではないでしょう。スマホに流れこむ膨大な情報や、複雑化する人間関係に対峙しつづけなければならない日々の中では、ひとり静かに本を読む時間をつくること自体が、決意のいる選択かもしれません。そのうえ、数ある他の娯楽をいくつか我慢し、見知らぬ人物の書いた小説に大切なお金を使ってくれるのだとしたら、せめてその勇気に見合う読書体験をしてもらいたい――そんな思いで挑んだ作品です。
今後は、新旧問わず数多の名著から惜しみなく学ばせていただきながら、とはいえ紙一枚、インク一滴を惜しむ性分はそのままに、一字入魂で精進してまいります。
*贈呈式で配布された冊子に収録された「受賞のことば」の本文に、一部抜けがございました。森山世衣さん、並びにご覧いただいた皆様に大変ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
森山世衣(もりやま・せい) 2001年、大阪府生まれ。京都大学総合人間学部卒業。








