インタビューほか

AIは雇用を奪うか? その時、私たちの暮らしは? 人工知能時代の経済を問う!

「本の話」編集部

『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』 (井上智洋 著)

「人工知能が発達したら、私達の仕事は無くなってしまうのか?」 『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』は、世界中の労働者が不安に思っている疑問に答えます。著者は、マクロ経済学の観点から人工知能(AI)が経済・社会に与える影響について研究している井上智洋氏。今回は、駒澤大学経済学部で同じポストの前任者という間柄であり、コメンテーターとしても活躍する飯田泰之氏とのスペシャル対談が実現しました。いま最も注目される経済学者による白熱議論をお楽しみください!

ベーシックインカムという新しい社会保障

飯田 そういった、あらゆる手段を講じても、いずれ、汎用AIによる大失業時代は来る。そのとき、社会保障政策としてベーシックインカム(以下BI)を導入するしかない、という考え方は非常に面白いですし、本書でも細かく分析されていますね。

井上 実は、「AI時代にはBIが必要だ」って言い出したのは、自分で言うのも何ですが、多分私が最初だと思うんです。「ようやく時代が自分に追いついてきたな」なんて……(笑)。

飯田 「AIにはBI」って語呂がいいですもんね(笑)。政府が生活保護費を出す人と出さない人の選別をするようなコストのかかるやり方をとらず、無条件に国民全員に一定の手当てを配るのがBIです。財源を累進性の高い所得税課税増税にすれば、所得の低い人はもらうBIの方が多くなるし、所得の高い人は持ち出しが多くなってバランスがとれる、ということも本書では出てきていました。これは、技術進歩の果実をみんなで共有するという考え方で、ちょっと社会主義的ですけど、まあいまさら社会主義なんて復活しないでしょうからいいかもしれません。

井上 いえ、意外とそうでもないんですよ(笑)。AI研究者の間では、いま、社会主義がホットです。AI=ロボットが作ってくれた品物がタダでお店に陳列されているイメージですね。しかし、そのお店が国有である場合、ソ連邦や東欧と同様の失敗が繰り返されるのではないかと私は思っています。やはり、AIが高度に発達しても、民間企業が営利で経営しないとうまくいかないのではないか。そうやって儲けた民間企業やそれを所有する株主に税金を課して、BIのような再分配を実施した方が効率的でしょう。それは未来の話ですが、今でも私は生活保護や失業手当をやめて、BIに統一した方がいいと思っています。ただ、今だったら、みんなが贅沢できるような給付額にしたらうまくいかない。月7万円くらいの保障にしておいて、あとは自分達で稼ぐ、というのが良いと思っています。というのも、一口に「財」と言っても、見栄のためにレクサスを買うというような「地位財」なんかもあるので、そういうものの購入まで政府が保障する必要はないと思います。

飯田 ただ、最近スイスではBI導入が国民投票で否決されましたね。

井上 スイスはいきなり月30万円くらいから始めようとしましたから。いくらスイスは物価が高いからといっても、30万円の給付額は高すぎます。それに、それで財政破綻してしまったら、BIのシステム自体に疑問を持たれてしまうかも知れませんから、否決されて良かった気がします。もっと少ない給付額から始めたり、人や地域を限ってやったりして、少しずつ前進するのがいいと思いますね。

飯田 1万円なり2万円くらいの少額を配ってみるなどして、国民が実体験としてやってみることから始めるのがいいのかもしれません。

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人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊
井上智洋・著

定価:本体800円+税 発売日:2016年07月21日

詳しい内容はこちら


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