アベノミクスの恐るべき正体
安倍政権は、株価を内閣支持率のバロメータにしている。そのため、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)からゆうちょマネーまで公的資金をつぎ込んで官製相場を演出してきた。その結果、2015年6月に日経平均は2万円台に達した。2012年12月は約1万400円だったから、なんと約2倍になった。ところが、ドル建てでは2012年12月は約127ドルであり、2015年6月は約163ドルだから36ドルしか上がっていない。
さらに、この株価上昇の恩恵を受けたのは海外投資家であり、私たちではない。日本の個人投資家が売ると海外勢が買うという展開で、2014年末、海外勢の日本株保有額は165兆円に達し、全体の3割を占めるまでになった。これは、日本の国富が海外に移転してしまったことを意味する。
なんでこのようなことが起こったのかは、もはや説明するまでもない。ここ3年以上続いてきた円安のせいである。アベノミクスは異次元緩和によって、この円安を加速させ、実際は日本の経済力を著しく低下させている。円安と株価上昇はアベノミクスの成果とされるが、ドルで見た場合、それはまったくのフェイクストーリーである。
本書中で、私はこのことを、図表を多用して詳述している。そして、現在の円安トレンドが、これまでの「円安になったら次は円高になる。そしてまた円安になる」という「循環円安・円高」でないと結論付けている。
現在の円安は、経済学的な「相対的購買力平価」「金利差」「量的緩和」などで説明する範囲を超えた日本経済の衰退、つまり、国力の低下が基底にある。だから、短期的に円高になることはあっても、長期的には円安が進んでいく。この先、円は1ドル150円、200円となる可能性もある。その意味で「円が安全資産」などと言っているメディアは常軌を逸している。
未来になにが起こるかはわからない。しかし、5年後、10年後の未来は確実にわかる。
日本の生産年齢人口は1995年の8726万人をピークに減少に転じ、その後も毎年減っている。総人口も2008年からは減少に転じている。いまや日本の総人口は毎年20~30万人減り続け、生産年齢人口は毎年100万人以上減り続けている。これが5年、10年続けば、経済の規模は確実に縮小してGDPも減る。経済成長率もじりじりと低下していく。そんななか、国と地方の債務の合計は1200兆円に迫ろうとしている。
人間はみな近視眼的に生きているので、未来がどうなろうと現在の快楽と利益を追求する。1万円札をいくら持っていても、少しも豊かになれない時代が訪れようとしているが、知ったことではないのかもしれない。
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