書評

三〇年の時を超えて

文: 末延 吉正 (中央大学特任教授・元テレビ朝日政治部長)

『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』 (出町譲 著)

 三〇年の時を超えて出町と私が共感し合えた土光の言葉と人生は、いまの若い人たちにも届くに違いない。

 私が大学で教えるゼミ生たちは、大震災後二年間かけて『原発とテレビ.検証・福島第一原発事故と日本のメディア.』の研究論文をまとめ上げ、アルバイトで取材費を稼ぎながら、被災地や首相官邸前の金曜日のデモを取材して「検証ドキュメントDVD」を制作した。彼らならば、実践者土光の言葉が持つ重さに共鳴すると確信し、課題図書に指定して感想文を書いてもらった。

 以下にその一部を紹介する。

 学生A(法学部・男子)
『20年以上も前に亡くなった土光敏夫という人物が発した言葉が現代に対し新鮮で、何より説得力を持っていることに、驚きを感じました。土光さんが持っていた社会に対する疑問や問題意識は20年以上も改善されることなく残ってきたわけで、私たち若い世代がこれらの問題に立ち向かっていかなければならないと思います』

 学生B(経済学部・男子)
『福島第一原発が米国のGE主導で、日本の風土に合わせて作られていなかったこと、津波を考慮した設計になっていなかったという事実は、衝撃的でした』

 学生C(法学部・男子)
『責任を伴う言葉が軽々しく使われる中で、言葉と生き方を一致させた土光さんは新鮮でした』

 学生D(商学部・女子)
『優れた人は人を大切にしている点に共感しました─資源は人間だ。すべての責任は私が負う─来年から社会に出ますが、100の土光さんの言葉を噛みしめていきます』

 学生E(法学部・男子)
『著者が指摘する、リーダーとしての土光氏と原発事故発生時の菅首相の比較はわかりやすいものでした。「失敗を恐れず、権限を行使せよ」と唱える土光氏に対して、菅首相は多くの仕事を自らが抱え込んで混乱し、最終的には責任の所在すら他人に押し付けてしまいました。周りを委縮させることなく、現場に業務を任せ、全責任を自らが負うというスタンスこそが、リーダーとしての役割だと思います』

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清貧と復興
出町 譲・著

定価:560円+税 発売日:2014年02月07日

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