2004.11.20 書評

なぜ女は女を区分けしたがるのか

文: 角田 光代 (作家)

『対岸の彼女』 (角田光代 著)

 以前、新刊のインタビューにきた人が、結婚はしているんですか、といきなり訊いてきた。していません、と答えると、結婚に至れない理由はご自分でなんだと分析されますか、と重ねて訊くのである。その質問よりも、そのインタビュアーが女性であったこと、同世代であったことに、私は少なからずショックを覚えた。

 同世代の女性であるならば、仕事をしていて、結婚していないと朗らかに答える女は、したいのにできないのではなく、結婚のほかに興味があるのだと、即座に理解するはずだと私はどこかで思っていたのである。しかし彼女は、「したくないからしていないのです」という私の答えもさらに理解できなかったようで、「何か問題のある家庭に育ったのですか、結婚したくなくなるような」と、重ねて訊いた。なんでこんなおかしな人と話をしなくちゃならないんだろう、と泣きたくなったが、よくよく考えてみれば、このインタビュアーはどこかおかしいのではなく、ただ、「区分け」をしたかったんだろうと思い至った。

 女性を、どこか必死になって区分けするのは女性だと、三十代も後半を過ぎてから、思うようになった。

 初対面の人に会ったとき、男性女性の区別なく、既婚未婚、子どもの有無についての話に及ぶことは、よくある。私もよく人に訊いたりする。べつだん失礼な話題だとも思わない。それを知ったほうが話が早くなるし、会話が弾むということがある。

 けれどそういう、会話の突破口というか、相手を知る手段ではなく、「区分け」のための質問というのがあって、これは女性同士しかしない。結婚していて子どもがいない。子どもがいて仕事もしている。子どももいないのに専業主婦である。結婚もしておらずする予定もない。そういう情報は、あるタイプの女性にとっては区分けラベルなのである。そうしてラベルをつけて区分けし、自分の立ち位置というものを理解する。自分の立ち位置が理解できると、その立ち位置の正当性のために、優劣をつける。少し前に、働く主婦と、専業主婦とのバトルがテレビでも雑誌でもとりあげられていたが、どちらとも無縁な私から見ていると、区分けの優劣に必死になっている女性たち、という印象を受けずにはいられなかった。

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対岸の彼女
角田光代・著

定価:本体560円+税 発売日:2007年10月10日

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