ほとんどの人に内緒にしているが、私は人生研究家になるためこっそり研鑽を積んでいる。人生とは何か、という問題に、並々ならぬ興味があるからだ。人生研究家を名乗るためには、多くの人生サンプルを集め、分類分析し、自身の人生についてもある程度把握しないといけない。だからそう名乗れるようになるのにはまだまだ時間が要る。私自身がもう少し人生を知る必要がある。
そんな私なので、『あなたの本当の人生は』という小説を、たんに小説としてたのしむだけでなく、人生研究にとってじつに興味深く深遠なテキストとしても読みこんでしまった。
以下、読書家の人には申し訳ないのだが、この小説の感想文というよりは、人生研究の途中レポートといったほうが近いかもしれない。私がこの小説から学んだ「人生」とは何か。
最初はこの小説を、三人の書く女たちの小説だと思って読んでいた。私も書く女のひとりであるので、その点において強い興味を引かれて読み進めていたのである。でも途中から、そうではない、もちろん書くことについても書かれているけれど、これは書く女だけの小説ではなくて、もっと広域におよぶ小説、言うなれば人生の考察小説だと思った。人生研究家を目指すものとして、あらたな興味と興奮を覚えつつ読み進んだ。
いや、人生研究家を目指していない人でも、人生という言葉を見聞きすれば、さまざまな疑問や仮定や仮の定義がぞろぞろと思い浮かぶのではないか。そのひとつひとつは、人によって――その人が何歳で、今何をしていて、仕事の満足度は、プライベートの満足度はどのくらいで、その「満足」の内訳はどのようなもので、ゴールをどのあたりに設定しているかあるいはいないか、などによって――大きく変わってくることと思う。でも、そんな多様な私たちであっても、「本当の人生」問題については、だれしも一度は考えたか、考えるか、するのではないかと推測する。表現の仕方はいろいろであるだろう。
私のやりたかったことってこれでいいんだっけ? とか、このままでいいのか私? とか、この相手で本当にいいの? とか、私はこの日々を手に入れるために今まで生きてきたのか? とか。とどのつまり「私は本当に私の人生を生きているか」というようなこと。
この小説に出てくる人々も、意識的にせよ無意識的にせよ、本当の人生問題について考えている。考えざるを得なくなる。
ここでちょっと、この小説に登場する主要人物をサンプルとして、彼らのまだ生きている最中であるところの人生を、かんたんにおさらいしたいと思う。
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