インタビューほか

今度は八咫烏vs.人喰い大猿の対決!
異世界ファンタジーは次のステージへ

「本の話」編集部

『黄金の烏』 (阿部智里 著)

謎の〈人喰い大猿〉はどこから来たのか!?

――そして何といっても、本書の最大の読みどころは、若宮たちと八咫烏を喰らう大猿との対決。この謎の〈人喰い大猿〉という発想は、どこから得たのでしょうか。

阿部 日本の神話や古い説話の中には、人を喰う猿の話というのは結構あるんです。小説に出てくるような具体的な描写があるわけではありませんが、昔の話の中で実際にさもあったことのように書かれていると、映画なんかで観るよりも、ずっと想像力がかきたてられるんですよ。こうしたものからヒントを得て、自分なりにイマジネーションを膨らませていった感じです。

 そもそもこの大猿が何者であるかはシリーズ全体の根幹に関わる問題で、実は『黄金の烏』を読み終えていただいても最終決着はついていません。私の中では〈八咫烏〉の世界にはひとつの長い歴史があって、この構造をすべて書くには1冊ではとても枚数が足りないし、単行本として楽しめるものにもならない。歴史の一部を切り取って作品としてどう完結した物語にしていくかが、最も苦労したところでもあるんです。まだ正体は明かせないことを申し訳ないと思いつつ、シリーズ全体の謎が猿である以上、ここで登場させなければ前へは進めません。もちろん、猿との決着までの構想はできているので、今仕込んでいる伏線を回収する日が楽しみです(笑)。

――デビュー当時は「松本賞史上最年少の女子大生」としても話題を集めましたが、現在の執筆のスタイルは?

阿部 今年の4月から早稲田大学文学学術院に進学し、小説を書くための勉強をしながら書いています。大学院は思ったより時間の制約も多いし、課題も多いので執筆一本に専念できないのは悩みといえば悩みです。でもやっぱり自分1人では思いつかないようなアイディアをどんどん勉強の中で見つけられるのはすごく良かったところで、作家活動をより豊かにするためのものであることは間違いありません。

 私の癖でひとつ単行本を書きはじめると、それが書き終わる頃にはなぜかシリーズの続きが出来てしまう。いいんだか悪いんだか分かりませんが(笑)、まだまだ書きたい物語はいっぱいあります。刊行スピードはそれほど上げられませんが、今後も本作で生まれた謎に対する答えとなるような作品を、読者の皆さんにお届けしたいです。

黄金の烏

阿部智里・著

定価:本体1,500円+税 発売日:2014年07月23日

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