- 2015.08.05
- 書評
デヴィッド・ボウイ、矢沢永吉、坂本龍一、忌野清志郎――74歳スタイリストのロックな交遊録
文:高橋 靖子
『時をかけるヤッコさん』 (高橋靖子 著)
ジャンル :
#随筆・エッセイ
この本の第1章をデヴィッド・ボウイが占める事になったのは、自然の成り行きです。
「僕はもともとインディーズの人間で、それがたまたまメイン・ストリームに泳ぎついたんだ」
これは、デヴィッドが発した言葉の中で、私が最も好きな言葉です。
約50年前、学校を卒業した私は、それに似たニュアンスで私の人生を歩み始めました。
その頃新しかった広告業界の、それもほとんどお手本もない「スタイリスト」と呼ばれる職業。「隙間中の隙間」にあったこの職業、日本で職業登録して納税した第1号という事になってます。
いつのまにか、たくさんの人たちと巡り会ってきました。
時にはシャイのかたまりになって動けないまま。
時にはすーっとエスカレーターに乗るように。
そして実はコツコツ、コツコツと努力して。
そうやってめぐりあってきた人たちは、自ら光を放ちながら、時代をつくった人たちでした。
とても幸運だったのは、彼らがまだその自覚もない時に、私も自覚のないまま伴走できたことです。
そして、ある時、それを伝えたい気持ちにかられるようになりました。
70年代ブームの今、私が伝えたいのは何なのか、自問してみます。
70年の輝きは、時代の奥にある漠然とした希望感が、エナジーの基本だったと思います。
けれども現在、「なんだかわからないけど、これから先におもしろいことがある」という希望を持つ若者が、どれほどいるでしょうか。そういう希望を打ちのめしたのは、私も含め、昔若者だった今の大人です。
74歳の私がスタイリストをやめないように、自分の中にいまだに存在する「20代、30代、40代の私」をやめさせたくないのです。
そして、細々ながら、みんなと時代を共有してゆきたいのです。