書評

「ヨソ者」「若者」「バカ者」が地方を救う! 眠れる資源を発掘し、磨き、稼ぐには?

文: 増田 寛也 (日本創成会議座長、元総務大臣)

『地方創生ビジネスの教科書』 (増田寛也 監修・解説)

いま、かつてないほど地方発ビジネスへ熱い期待が寄せられている。昨年度「新書大賞」1位『地方消滅』の著者にして地方問題の第一人者が、ベスト・オブ・ベストとなる10事例をひきつつ「成功の極意」を伝授!

没落した献上栗が復活、「ななつ星」が採用

 本書では、全国北から南まで、さまざまなタイプの10の成功事例を紹介する。

 たとえば、卓越したマーケティングやブランドづくりで、再生を果たした熊本県山江村の事例。JA統合により一時消滅した献上栗ブランドを復活させることに成功した。超高級の渋皮煮がJALファーストクラスや高級寝台列車「ななつ星」のデザートにも採用されたというサクセスストーリーだが、そこに至るまでは、紆余曲折があった。特に、農協との関係をどうするかは、農産物ビジネスをするうえで避けて通れないテーマである。

 ほぼゼロの状態から復活し、まったく新しい価値を生み出したのは、東日本大震災の被災地、宮城県山元町の「ミガキイチゴ」だ。地元のイチゴ農家は津波によって壊滅的な被害を受けたが、最先端のIT農業で見事復活。付加価値を高め、日本一の売り場に並べただけではあきたらず、インド市場にも進出した。だが、驚くべきことに、イチゴ自体を輸出するのではないという。では、彼らが輸出しているのは、いったい何なのか。

本州一人口の少ない村が大儲け!

 新たにバイオ産業の集積地として名乗りを上げたのが、山形県の鶴岡市だ。慶應義塾大学の研究所を誘致し、研究開発企業や試験研究機関を取り込んで、付近一帯を「バイオサイエンスパーク」化した。ハイテク素材で世界に挑むバイオベンチャー「スパイバー」も誕生し、これからますます楽しみな地域である。

 どの事例も立派すぎて、自分たちには参考になりそうもないという人には、ぜひ、本州一人口が少ない和歌山県北山村の事例を読んでほしい。人がいない。予算もない。外注しようにも会社もない山の中の“飛び地”で、村役場の人たちがいかに事業を立ち上げたのか。どうやって差別化を図り、いかに全国にアピールしたのか。これ以上ないほど小さな自治体の取り組みは、きっと読む人に勇気を与えてくれるに違いない。

Iターン、Uターンのヒントも満載

 本書には、たくさんの「ヨソ者」「若者」「バカ者」が登場する。地元の経験豊富なベテランの中にも「バカ者」はいるし、役人の中にも自ら苦労を厭わない「バカ者」はいる。地方創生ビジネスでは、愛すべき彼らに活躍の場を与え、その力をうまく引き出すことが、成功のカギを握る。

 だが、それは一面の真実を言い当てているにすぎない。「ヨソ者」「若者」「バカ者」を受け入れ、バックアップし、同じ方向に向けて力を合わせる地域の人たちの存在がなければ、地方創生ビジネスは絵に描いた餅となってしまう。

 本書に収録した成功事例も、すべて順調に運んだわけではない。困難もあれば、挫折もある。それをいかに克服して、次の一手につなげたか。本書では、そうした物語にもスポットライトを当てている。

 各章末には、各事例のビジネスモデルを図解して掲載してあるので、ぜひ参考にしてみてほしい。本書が、地方創生ビジネスに実際に取り組んでいるみなさん、これから着手しようと考えているみなさん、地方へのIターン、Uターンを考えているみなさんのヒントになれば幸いである。

増田寛也

増田寛也

1951年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。建設省を経て、岩手県知事、総務大臣を務める。2011年より日本創成会議座長。2013年、全国の市町村の約半分にあたる896の自治体に“消滅”の可能性があるという調査結果を公表。『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)は大きな反響を呼び、「新書大賞2015」1位に選ばれる。「地方問題」の第一人者として活躍中。

地方創生ビジネスの教科書
増田寛也・監修/解説

定価:本体1,200円+税 発売日:2015年08月28日

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