2015.05.02 書評

400年前から「地方創生」
日本には福井があります!

文: 藤吉 雅春

『福井モデル 未来は地方から始まる』 (藤吉雅春 著)

 それはガックリくるニュースだった。4月11日、新聞とテレビは安倍首相の福井県視察をこう報じた。

〈安倍首相は福井県鯖江市内の眼鏡枠製造工場で記者団に、「創意工夫で新たな活力を引き出していこうと地方において頑張っているみなさんを応援し、新たな取り組みを全国に展開していきたい」と述べた〉

 あれ? それだけ?

 連日のようにマスコミは「地方創生」を連呼し、安倍内閣も「最重要課題」と訴えているが、なぜ首相が福井県を訪れたのか、その理由は報じなかった。

「地方創生」に関しては、「このままだと日本は地方から消滅していくぞ」と脅迫するような報道がなされているのに、実は地方がどんな工夫をしてどん底から這い上がってきたか、東京の人々はその面白い仕組みを無視している。

 それは非常にもったいないことだと思う。「人口減少」でもっとも打撃を受けるのは、人口のほとんどが高齢者になってしまい、病院も介護施設も不足する東京なのに……。

 たとえば、福井県の次の数字を見て、どう思うだろうか?

・共働き率 1位(女性の就業率2位)

・合計特殊出生率8位

・保育所の収容率1位

・正社員比率1位

・勤労者世帯の実収入1位(!)

藤吉雅春 1968年佐賀県生まれ。「週刊文春」記者を経て、ノンフィクションライターとして独立。2011年に一般財団法人「日本再建イニシアティブ」の民間事故調「福島原発事故独立検証委員会」ワーキンググループ参加、共著に同財団の『日本最悪のシナリオ 9つの死角』。2014年に創刊した『ForbesJAPAN』副編集長兼シニアライター。

 これらの数字ゆえに、福井県は長年、幸福度ランキングでトップの位置を占めている。

 見逃してはならないのが、小中学校の全国学力テストと体力テストで、福井県は常に1位か2位をキープしている点だ。

 しかも、テスト対策の授業は行っていない。地頭が良くなるような思考力を深める授業を、実は戦前から独自に行っている。

「こんな面白い授業を受けてみたかった!」と、取材中に目から鱗が落ちるほど、創意工夫の教育が行われ、それは最終的に「裏日本」で生き残るための独自の産業を築き上げてきた。

「パリコレの7割は北陸産の生地」

「眼鏡の三大産地は、イタリア、鯖江、中国」

 こう言わしめているが、実は繊維も眼鏡も斜陽産業である。

 斜陽産業なのに、眼鏡は一社あたりの出荷高が過去最高を記録し、繊維はヨーロッパの航空機から高橋尚子選手のシューズまで鯖江の技術が世界を凌駕する。

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福井モデル 未来は地方から始まる
藤吉雅春・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2015年04月21日

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