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脇役俳優・亀岡拓次には、自分も5割くらい入っていますね――戌井昭人さんインタビュー(前編)<br />

脇役俳優・亀岡拓次には、自分も5割くらい入っていますね――戌井昭人さんインタビュー(前編)

「本の話」編集部

『俳優・亀岡拓次』『のろい男 俳優・亀岡拓次』 (戌井昭人 著)


ジャンル : #小説

『のろい男 俳優・亀岡拓次』 (戌井昭人 著)

――作品中、「亀岡はこう思った」「亀岡はこう考えた」という表現がほとんどありません。くよくよ悩んだり、考え込んでしまうことはないんでしょうか。

 深く考えると動けなくなってしまう。考えるより、形を作っていったほうがいい。それに、考えると情けなくなったり、さみしくなってしまうから、オートバイで走ったり、なるべく止まらないようにしているんでしょうね。

――亀岡は、映画に奇跡を起こす男。二日酔いで撮影中、吐いてしまって、もの凄い映像が撮れたり、ズボンの中に仕込んだビニール袋がうまく破れず、実際におしっこして一発OKが出たりする。瞬時の決断がすごいです。

 小道具さんに無駄な気遣いをしてね(笑)。間抜けなことが起きて、OKになっていく。

――たとえばマンガ『ガラスの仮面』の北島マヤも奇跡を起こす女優ですが、いわば憑依型。亀岡はそれともまた違うタイプなのでは。

 憑依型ではない。俯瞰してますよね。監督の考えで動いている。でも、わずかな瞬間、ぽん!とワープして、気づいたらミラクルを起こしたり、勢い余ってドジを踏んだりする。いつもは役柄に入り込まないようにしているけれど、行くときは行ってみよう、という心構えで、それがうまくいくんでしょうね。

――どんな現場でもそれができるのが、脇役俳優としての評価が高い理由でしょうか。

 情けないように見えて、実はすごい自信がある奴だと思うんですよね。だから、そこまで行けちゃうんだと思います。

「俳優 亀岡拓次」主演の安田顕さん
©2016「俳優 亀岡拓次」製作委員会

――1話ごとに、亀岡が映画のロケで訪れた土地でのエピソードが繰り広げられます。とにかく場所の設定が絶妙。『俳優・亀岡拓次』の第1話は、諏訪が舞台です。

 山下敦弘監督の『松ケ根乱射事件』で初めて映画に呼ばれて、茅野に行ったんです。撮影が延びて、スケジュールが1日空いてしまったとき、そうだ、殿山泰司気分になろう、と、一人で飲みに行ったんです。連載を始めるとき、そのときのことを思い出して、書き始めました。寒天が名産品って言われても微妙だよなあ、とか(笑)。

――第2話は和歌山。極道映画『辰巳横町花吹雪』シリーズで一世を風靡した名優・鎌田登が、現場で亀岡に助けられたお礼に、飲みに誘ってくれる。山の中に忽然と料亭があらわれて、きれいな芸者さんたちが山ほど現れる……。

 たぬきに化かされた感を出したかったんです。自分もそういうところへ行ったことはないんだけれど、1回、化かされてみたいな、という気持ちがありまして。

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俳優・亀岡拓次
戌井昭人・著

定価:本体680円+税 発売日:2015年11月10日

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のろい男 俳優・亀岡拓次
戌井昭人・著

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