やがて文庫化の時が近づいてきました。私はこれが最後のチャンスだと思い、「猛射つ」を長編に書き直させてもらえないかと担当者に頼みました。担当者は少し驚いたようですが、最終的には快諾してくれました。残りの三つの作品は、その前に刊行される『虚像の道化師』に合わせて収録する、ということで話がまとまりました。
こうして「猛射つ」の長編化に着手したわけですが、読み返してみて、なぜ心残りだったのかがはっきりとわかりました。せっかくの大きなテーマを作者自身が十分には理解しておらず、形ばかりの扱いになっていたのです。
この作品で自分は一体何をやりたかったのか。常にそのことを考えながら、改稿作業を続けました。やがて主人公だけでなく、脇役や悪役にいたるまで、一人一人の生き様や心情が私の中でしっかりと形を成してきたのです。これは中編「猛射つ」として書いていた時にはなかったことでした。
こうして『禁断の魔術』という長編小説ができました。ここに登場する湯川学は、「シリーズ最高のガリレオ」だと断言しておきます。
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