- 2015.06.11
- 書評
改稿によって立体的に見えてきた──東野圭吾「ガリレオ」シリーズの特色
文:千街 晶之
『禁断の魔術』 (東野圭吾 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
東野圭吾の代表作である「ガリレオ」シリーズのうち、2012年に相次いで刊行された『虚像の道化師 ガリレオ7』と『禁断の魔術 ガリレオ8』が、文庫化に際して大きく編成を変えたことは、既刊の文春文庫版『虚像の道化師』をお読みの方ならご承知だろう。単行本版の二冊に収録された八篇のうち七篇までが、文庫版『虚像の道化師』にまとめて収録されたのだ。では、残る一篇、このシリーズの一区切りとも言うべき重要な作品だった「猛射つ」はどうなったのか? このたび刊行される文庫版『禁断の魔術』は、二百五十枚ほどだった「猛射つ」を、約四百枚の長篇に改稿したものである。
湯川学の高校の後輩にあたる古芝伸吾が、湯川が教鞭を執る帝都大学に入学した。二人が知り合ったのは、伸吾が高校二年生の頃。彼が所属する物理研究会の廃部の危機を救うため、湯川がOBとして一肌脱いだのだった。大学生になった伸吾は早速湯川と久闊を叙したのだが、その直後、彼は姉の秋穂がホテルで急死したという報せを受ける。翌年、長岡というフリーライターが何者かに殺害された。彼が所持していたメモリーカードには、建物の壁に穴が開くところを撮影した謎の映像が残されていた……。
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